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そろそろローファーがなかなか履けないフリもしんどくなってくるぞ、という程度の間が空いた頃、不意に頭上からフッと吹き出すような笑い声が聞こえる。

 さっきまで年不相応な大人びた憂いを纏っていた黄瀬くんが、中学生らしいあどけない笑みを浮かべながら「ずっと思ってたんスけど帰宅部エースってなんなんスか」とクスクスという笑い声の隙間でそう言った。

 ……なんか、三度目の正直でウケてる。
 とりあえず自分の回答は間違っていなかったようだ。

「えーそりゃ、放課後一番楽しく遊べる奴がエースだよ」
「はは、それもう帰宅じゃないじゃないッスか」
「私は手強いよ〜、この学校で一番原宿とか新大久保詳しいし」
「何スかそれ」

 負けてらんないッスわ〜、と黄瀬くんは冗談めかして言う。とりあえずグッドコミュニケーションは取れた、筈だ。前世の社会人経験で得た自分の年相応(前世換算)のコミュニケーション能力に感謝だ。

「てか、私裏門からだからバイバイ」
「え、俺も裏門ッスよ。途中まで一緒に帰ろうよ」
「そうなの? 今まで全然帰り被んないから正門組だと思ってた」

 そういえば、ここ1週間黄瀬くんがホームルームが終わった瞬間に色んな人に囲まれてるのを大変そうだな、と思いながら私そそくさ帰ってたな、と思い返す。

「じゃあ帰りコンビニ寄ってこーよ。アイス食べたい」

 そう持ちかけると黄瀬くんは少し嬉しそうに、「なんか、中学生っぽいッスね」と言う。
 確かに小学生には寄り道して買い食いする文化あんまりないもんね。見た目も抱えるモヤモヤも何処か中学生離れした黄瀬くんも、まだまだ中学生になりたてってわけだ。可愛いやつめ。

「これも帰宅部の活動の一環だからね。ちなみにアイスはバニラ派?チョコ派?」
「ストロベリー派ッス」
「二択で聞いてんのにそれ以外で答えないでよ」
「Aちゃんは?」
「抹茶派〜」
「人のこと言えないじゃないッスか」

 案の定合わない趣向を確かめ笑い合い、横で少し楽しそうに私の他愛もない話を聞く黄瀬くんを横目に見ながら、部活動の喧騒を背に裏門まで足を進めた。
 とりあえずサインは後日また行けそうな機会を見つけて絶対貰うぞ、なんて心に決めながら。

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設定タグ:黒子のバスケ , トリップ   
作品ジャンル:アニメ
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牛タン(プロフ) - アンパンさん» コメントをいただきありがとうございます。そう言っていただき光栄です。度々話のキリが悪い更新の仕方ですが、温かく見守っていただけますと幸いです🙇 (3月1日 23時) (レス) id: 68be7e4af6 (このIDを非表示/違反報告)
アンパン - めっちゃ文章が好きです!!これからも更新楽しみに待ってます (3月1日 15時) (レス) @page20 id: 2d65495c60 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:牛タン | 作成日時:2024年2月27日 9時

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