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二宮さんが吐いた煙が消えてなくなると、エレベーターのドアが静かに開いた。
頬に触れた指が、スッと消えると、熱を持った顔が途端に恥ずかしくなる。
「早く乗りなよ」
先にエレベーターに乗った二宮さんは、おいで、と右手で手招きする。
それに吸い付けられるようにつられて、私もエレベーターに乗り込んだ。
「どうする？俺と寝る？」
ドアが閉まって、“７”とボタンを押す。
ツン、と鼻を擦るタバコの匂いに、二宮さんのことを“苦手”だと思った心が叫び出す。
苦手、うん。そうだよ。
「寝ません、からかわないでください」
抜け落ちた記憶に、また胸が痛くなった。最悪だ。
この人のせいで、私は無駄に傷つけられている。
「え？本気？」
「はい」
「ホント？」
「はい」
「じゃあ、添い寝でもする？」
「は、」
「あ、添い寝はいいんだ(笑)」
横目でチラッと覗き込むと、ふふっと緩む口元が妙に楽しそうに笑っていた。
なに、この人・・・分かんない。
一瞬でも二宮さんに奪われかけた気持ちを、その気持ちを、私は強くもみ消す。
ただの酔っ払いの冗談だ。からかわれているだけ。
「翔さんにちゃんと連絡してあげてね」
エレベーターから出て、私は私の部屋に、二宮さんはその右隣の部屋に帰った。
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作者名：妃紀
| 作成日時：2017年12月22日 18時
