あの傭兵に妹がいたようで【第五人格】 (ページ14)

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ナワーブside

パチリパチッパチッ

瞑っていた目を瞬かせる。絵画の掛かった壁が目に飛び込む。

「あれ…？俺は何を…」

先程までステージ内にいたはず。
ゲート内でアイツに押されて……

「ナワーブ！！」
「先輩！」

ぼうっとした意識のまま後ろを振り向けば、試合仲間達が走ってくる所だった。

「お前ら……アイツは？一緒じゃなかったのか？」

「メディックさんが君を助けたじゃないか…というか、君負傷してたよね！？
どうして無傷で生還したんだい？」

「知らねぇよ。俺も訳分かんないままほっぽり出されて気づいたらここにいたんだよ！」

「ま、まぁまぁ…取り敢えず観戦室行こ！」

マイクが俺の背中を押して前に歩かせる。
また気分が悪くなりそうだ。

胸糞悪い。

「こりゃ3逃げ確定だな…」
「リッパーも盛大にやるよな…」
「今日は気が立ってたのよ。きっと」
「見てられないなの…」

観戦室に行けば試合に出ていない仲間達がモニターにかじりついていた。
俺等3人が入ってくると何も言わずに席を開けた。

「今こっち見てるけど…巻き戻したかったらこっちのモニター使って」

「ありがとうなノートン」

片方には血溜まりの中、ハンターを恨めしそうに見上げるアイツの姿が。
自分もリッパーには何度も殴られているがあそこまでの怪我をした事はない。

あの後…中に押し込まれる寸前何が起こった？
ダウンを取られる前の俺は無傷になった後、もっと悪足掻き出来たはずだ。

傷を無くすのがアイツの特質なのか？資料をよく見ていないから分からない。

だとしたら何故そんな無理をしたのか聞きたい。
何も守ったのが俺じゃなくてもいいだろうに。

突如、室内が湧き上がる。
何事かとモニターを見てみれば、そこには【完全勝利】の文字が。

「あの状況からとは…やるなアイツ！」
「良かったぁぁぁ…」

カタンッ

ズッ…ズリッ……

何かが引きずられるような音。
その音に引かれて俺はそっと室内を出た。

廊下で点々と綴られた赤い点が鈍く光る。
点の先に今にも倒れそうなフラフラとしたアイツがいた。

「おい」

聞こえていないようだ。

今度はもう少し大きめの声で呼びかけてみる。

「おい！！」

階段を上がろうとしていたヤツは動きを止めて此方をチラッと見た。

ヤツの目を見た瞬間少し鳥肌が立った。

軍帽とガスマスクの間から覗いたその目は光が一筋も宿っていない、冷たい目をしていたから。