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110話「模試破り」 ページ10

「あ、私このお休みの日の午前中は行けませんよ」

リコ先輩が気合を入れて勉強のシフトを考えている時、私は入れられた名前に指を指した。休日の午前中だ。

「え?なんで?」
「模試破りの日です」
「模試、破り?」

リコ先輩が復唱する。私は携帯を見せた。そこには、有名な大学の模試のパンフレットの画像がある。

「道場破りならぬ、模試破りです。友達と受けてくる予定だったので」
「…………へ?」






「あ、亜美ちゃん。お久しぶり」
「Aちゃん!……あら、ほたるちゃんも一緒なのね」
「うん!亜美さん、こんにちは」
「順位に入れなくていいなら、って特例で参加させて貰えることになったから一緒に来た」

当日。駅前で待ち合わせをした。メンバーは私と水野亜美ちゃんとほたるちゃんである。
この模試破りの話は結構前から進んでいて、2人は今の学力をただ知りたいだけらしくて参加した。
私は問題を解いてその達成感を得たい、くらいの気持ちだ。

有名塾に向かう。朝早めに集合して、模試は昼前には終わる予定だ。
そして、火神くんの勉強会に参加する流れである。

「○○模試、これか」
「楽しみ」
「どこまで通用するのかしら」

場所について、受付を行う。ほたるちゃんは年齢的にも別室で受けるように配慮して頂き、私と亜美ちゃんは本来の受験会場に行く。
少し離れた席にお互いついた。亜美ちゃんはすぐに参考書を開いてしまった。

私も何冊か持ってきたが、そんな気にもならない。
ぱらぱらとめくりながらなんとなく周りを見ていると。

「…………随分余裕なんですね」
「……?」

隣から話しかけられた。
黒髪で、特徴的な眉をもった男が、仮面のような笑みを貼り付けて私を見ている。

「……えっと、そう見えましたか?」
「周りをよく見ているので。なにか気になることでも?」
「……いえ。特に。みんな、よく勉強してるなと思って」
「東大模試ですからね。そりゃ皆さん、真剣になりますよ」
「……じゃ、貴方も真剣なんですか?」

ちらりと彼の顔を見る。変わらずに微笑んでいる。こそこそと、2人でしか聞こえない声で、私たちは会話を続ける。

「一応。受けに来てるんですから」
「へぇ……ちなみに手に持ってるそれ、参考書じゃなくてただのエッセイですよね?英語で書かれたエッセイが、模試にどう繋がるんですか?」
「……………………へぇ」
「あ、化けの皮剥がれた」
「お前、うぜえな」
「最近よく言われるんですよね」
「…………チッ」

111話「胡散臭い、性格悪い、変人、天才×2」→←109話「一緒にすんな」



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作者名:白咲ナナ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php  
作成日時:2023年10月22日 1時

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