107話「血塗れた罪」 ページ7
電話ボックスは一瞬で消えた。
残されたのは、スターシードを抜かれた、男女二人と、私。
「メイクアップ!」
ファージ化する2人にロッドを構える。
早く終わらせたかった。
消えていった彼女の言葉で、酷く動揺していた。
「アケホシ、いいか」
シリウスが耳元で囁いた。
「まずは生きろ。……後ろに黒子たちもいる。見られてるぞ」
「っ、」
追いかけてくるだろうなとは思っていたけれど、こんな時くらい放っておいて欲しかった。
じゃないと、自分が何者か、分からなくなる。
「アッハッハッハッハッ!」
「どうした、そんな顔を白くさせて。……ま、今から真っ赤に染めあげてやるんだけどなァ!」
槍と鎌を持つ2人が、私との距離を一気に詰めてきた。相変わらずスプラッタだ。きっとうさぎちゃんたちの前には姿を現さないファージだ。
そして、きっとこれが現れるのも、全て。
私の、今まで生きてきた、罪なのだ。
「ひとりで背負うなよ」
「シリウス」
「お前は、もうひとりじゃない」
シリウスが離れる。
ロッドが、白いレイピアに変わる。
「…………そう、かな」
私はまず、鎌を持つ男の方を見た。
腕を後ろに引いて、構える。
何処を的確に突けばいいのかなんて、すぐにわかった。
だって、これはずっと、やって来たことだから。
*
「よお、追いかけてこなくてよかったのに」
白い猫が、背の高い男たちに声をかける。
猫の後ろでは、少女が化け物二体と、戦いを繰り広げている。
「表情が引きつってるぜ?……初めてじゃねえくせに」
「……明星さんは、ずっとこれを、しているんですか」
黒子が呆然と眺めながら聞いた。少女のレイピアが、男の鎌を持っている腕を刺す。ぶしゃ、と緑色の体液を出して、男が絶叫する。
うっ、と黄瀬が両目を覆ったのを視界に捉えながらも、黒子はシリウスを見て、もう一度尋ねる。
「こんな、戦いを、中学の時から」
「……もう、ずっと前からだ」
「……中学よりも前、なのか」
「そうだな。現世(ここ)では、中学からか」
「なんだそれは。まるで別があるかのような言い方だな」
口を一文字に結んで戦いを見ていた緑間が話に入ってきた。
「あるといったら、どうする?」
「どうするもなにもないのだよ。……今更すぎる」
「ええ、真ちゃん受け入れるの早くね!?……って言いたいとこだけど。……まあ、明星ちゃん変なやつだし」
高尾の言葉に、全員頷く。
シリウスは、安堵のため息を吐いた。
「……お前らでよかったよ」
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作者名:白咲ナナ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php
作成日時:2023年10月22日 1時