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134話「こんなに悔しかったっけ」 ページ34

その後の誠凛の試合は、火神くん欠場で挑むことになり、全てのチームで負けた。
つまりインターハイ予選決勝で、誠凛の戦いは終わりを迎えたのだ。

試合を終えて会場をあとにした誠凛は、駅前で解散する流れになった。

「とりあえず、今日はもう解散。とりあえず2日オフね。……バカ神は2週間練習禁止!」
「ああ。まずは体を休めろよ」

リコ先輩と日向先輩は、こんな時でもしっかりと監督と主将で、安心する。

「ま、それもそうだ」
「休んだ後に次のこと考えよーぜ。俺たち、結果はともあれ、よく頑張ったよ」

伊月先輩と小金井先輩も、悔しい気持ちがあるはずなのに、それを抑えていつも通りだ。なんというか、どっしりという訳では無いのに、安心出来る逞しさがあった。

「……うす」
「……わかりました」

一方、火神くんと黒子くんは少しギスギスしていた。返事はするほどの元気はあるようだけど、二人の距離は離れているし、ぎこちない。

「Aちゃん?どうしたの」
「あ、いえ」

それぞれを観察していたらリコ先輩に心配されてしまった。首を振って大丈夫なことを伝えると、改めて全員の顔を見た。両手を腰に当てて、真剣な顔で口を開いた。

「きっと色々考えることもあるだろうけど!バスケすんのにも考えるのにも身体が必要なんだから、まずはしっかり休むこと。そのあと、色々やんなさいよ。特に、気持ちの整理なんて、いつだってできるんだから」

リコ先輩だって思うところはあるはずなのに。
自分のことより選手のことを考えてくれる彼女が、この時だけは誰よりもキラキラと輝いていた。



解散後、私は迎えが来ているからと駅前ですぐに集団から抜けた。黒子くんも火神くんも、私を送るほどの余裕もなかっただろうし、同じ会場で試合を見ていたらしいはるかさんが気を利かせてくれたのだ。

「おまたせ」
「ううん。ありがとう」

車が待っていられる場所に、スポーツカーが一台止まっていた。乗っているのははるかさんだけだった。

「みちる達は先に帰ってご飯の支度してるってさ」
「……気を遣わせてる?」
「違うよ。Aにゆっくり休んで欲しいっていう僕達のワガママさ」

それを気を遣っているのではないだろうか、と思ったけれど言わなかった。助手席で少し冷たい風を浴びながら、車はすいすいと家へと向かっていく。

「……はるかさん」
「なに?」
「……負けるのって、こんなに悔しかったっけ」
「……そうだね。少なくとも、中学時代の君は泣いてたよ」

135話「知ってるはずなのに」→←133話「敗北⇔勝利」



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作者名:白咲ナナ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php  
作成日時:2023年10月22日 1時

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