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131話「私がなってあげる」 ページ31

「言いたいことは、それだけ?」
「ぐ、う、……おまえ、」
「もう一発、拳をお見舞いしてやろう」

すかさず化け物の顎に拳を入れる。下から突き上げるようにパンチをして、宙に浮いた化け物にもう一度腹に蹴りを入れた。
化け物は5メートルほど吹っ飛んだ。

「ふう」
「クッ、覚えていなさいよ!あんたはなんとか青峰君だけでも復讐しちゃいなさ〜い!」

分が悪いと思ったのか、セーラーアイアンマウスは捨て台詞を履いて、黒い電話ボックスに入ると、姿を消した。相変わらず逃げるのだけは早い。

「ま、いいよ」

セーラーアイアンマウスはきっと、私が何もしなくてもきっと終わりが近い。
化け物に向き合う。

「で、お前さ」
「……ッ、」
「青峰君のこと散々なこと言ったけど、随分と人任せなやつだね」
「な、」
「確かに強すぎるやつが一人いるとさ、その実力の差に、どうしようもない負の感情を抱くよ。嫉妬とか、絶望とかね」

私の言葉に、青峰君も化け物も、言葉を詰まらせた。

「……あんたの気持ちもわかる。でも、殺しはダメだ」
「うるせえな。どうにかなるようなら、とっくにそうしてる」
「ま、そうだよね。……理屈でどうにもならないよね」

私も、そうだったから、気持ちがよくわかる。
そして、どうしたらよかったのか、まだわからない。
でも、一つだけはっきりしていることがある。

「でも、死んだら何もなくなるよ。そして、殺した側は一生後悔して、死ぬよりつらいよ」
「っ、」
「それに、この世界にはさ。70億人が住んでる。きっと、強い人間はどこかに絶対いる」
「……」
「見つけないで終わるの、勿体ないじゃん」

この二人は、いや世界にいる人間はきっと、死ぬという経験を知らない。当たり前だけど。
でも、今はファージという化け物に変わっていて、負の感情に支配されているから、疑似的であれど、それすらできてしまう。
だからこそ、間違ってほしくない。
もう、あんな経験は、みんなにしてほしくないのだ。

「大丈夫。もしダメだったら、私が探してあげるし、それでもだめなら……私が、相手になってあげるよ。青峰君の」
「はぁ!?」
「……お前が?」
「いなかったらの話だよ!……さ、悪夢はここまでだ」

ロッドを構える。突拍子のない話に化け物はすっかり戦意喪失している。
今がチャンスだ。

「アルカイド・カタルシス!」

綺麗な光だなあと思いながら、化け物が綺麗に浄化されるのを見届けた。

132話「今はそれでいいよ」→←130話「化け物はどっちだ」



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作者名:白咲ナナ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php  
作成日時:2023年10月22日 1時

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