126話「それはもう病気」 ページ26
「連絡先教えて?」
「え?……あ、はい」
「なんで敬語?1年生なんだからタメ口でいいよ!」
気がつくと携帯を差し出すように言われ、連絡先を交換した。桃井さん……さつきちゃんはまるでプールの時とは別人だった。
「やっぱり天然タラシですね」
「こいつのそれはもう病気みたいなもんだ」
いつの間にかシリウスは黒子くんの肩に移動していた。二人して、私のことを見ながらひそひそと話している。
「あ、私もう行かなきゃ。テツくん、Aちゃん、また会おうね!絶対!」
「はい。また今度」
「……う、ん」
さつきちゃんは壁にかかった時計を見て、慌ただしく別れてを告げると、走っていってしまった。
「嵐のような子だった」
「桃井さんはそういう人ですよ」
黒子くんが可愛いだけじゃない、というのも今なら理解できる。戦った時とはまた別の疲労感を得た私は、大きく伸びをした。
そして、ようやく、しばらく見ていない人が一人、いることに気づいた。
「火神くんは?」
*
(原作にないです)
「おー、桃井帰ったか」
「桃井さんお疲れ様です!スイマセン!」
「何に謝ってんだよ……」
場所は変わり桐皇学園。さつきが戻ると、バスケ部の主将である今吉、丁度休憩していた桜井と若松が声をかけてくれた。他のメンバーはゲーム中のようだ。
「はい!」
桃井はこれでもかと笑顔で三人に返事をする。行く時より見るからに元気な彼女を、不思議に思った今吉が話しかける。
「なんや自分。いいことでもあったか?」
「あー!それ聞いちゃいますか?」
「聞いて欲しいって顔してるからな」
「いいですよ。実はですねぇ、誠凛バスケ部のマネージャー、すっごい可愛くてかっこいいんですよ!」
桃井からのまさかの情報に、三人は固まった。普段レベルの高いデータ分析をする彼女から、こんな抽象的な感想が出てくるとは。
桃井はその反応は露知らず、両手で自分の頬を包み込んで話し続ける。
「私、ちょっとしたトラブルに巻き込まれて、死んじゃうかと思ったらマネージャー、Aちゃんが助けてくれて!もう、本当に王子様のようで!」
「……桃井、今、何ちゃんって言うた?」
今吉がぴくりと眉を動かす。桃井はぴたりと止まって答えた。
「え?Aちゃん、ですけど」
「そいつの苗字、何?」
「明星です。明星Aちゃん」
桃井がそう答えると、今吉は目を見開いて、その後ゆっくりと細めた。唇も弧を描く。
「こんな偶然もあるんやなぁ」
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作者名:白咲ナナ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php
作成日時:2023年10月22日 1時