美少女戦士やりながら高校通ってます３ (ページ24)

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124話「ペース配分を考えて欲しい」ページ24

「……いや、プール清掃員、解雇の方がいいんじゃないの」
「短期バイトで入った大学生だと思うぜ。そのうちやめるだろ」

浄化した男を見ると、茶髪のガタイのいい男性だった。ポケットから落ちたカードに清掃員の文字を見つけると、余計にこの男に対して不快感が押し寄せる。シリウスは淡々と説明して、男の息があるのを確認すると、すたすたと黒子君たちの方に行く。
私も変身を解いて、後をついていく。

「はーぁ。最近露骨に増えてるなあ」
「いい練習になっていいじゃねえか」
「そういうことじゃないの！」
「明星さん、大丈夫ですか？」

シリウスと言い合いをしていると、黒子君が桃井さんをおんぶしたまま話しかけてきた。心配です、と顔に書いてある。

「うん。ばっちり。そっちこそ、体調は？」
「すっかりよくなりました。……桃井さんは、わかりませんが」
「……んぅ」

黒子君が自分の肩越しに桃井さんを見ると、彼女のきれいなまつげが動いた。ぱちりと目をあけて、何かに気づいたかのように急いで顔を上げた。

「は、っ、……え？私、……」
「元気そうだね」
「桃井さん、体調は大丈夫ですか？」
「っ、え！て、テツ君！？なんで私、テツ君に、おんぶされて、」

恥ずかしそうに、でもうれしさを隠し切れない様子で桃井さんは周りを見た。そして、目の前に私と、私の肩に乗っているシリウスを見て、固まった。

「……えーっと。明星、さん？」
「うん。桃井さん、大丈夫？」
「……さっき、助けてくれたの、ってあなただよね？」
「桃井さん、まさか……」

黒子君は桃井さんの核心をもった言葉に驚いていた。私は何も答えず、シリウスに目配せする。

「……そろそろ忘れる薬とか、持ってないの？」
「残念ながら、もうそれは売り切れだ」

「え、え！猫が、しゃべってる！」

＊

「はい。とりあえず喉乾いただろうし、これ飲んでよ」
「あ、ありがとう」

ベンチに座らせた桃井さんに、小さいペットボトルを渡す。ラベルはとくについていないので桃井さんは若干警戒したけれど、助けるように視線を向けた黒子君はただ頷いたので、一瞬で覚悟を決めて飲んだ。好きな男の頷きだけで得体のしれない飲み物を飲むなんて、恋は全く不思議なものだ。

「得体のしれない飲み物を渡すお前も大概だけどな」
「そういうシリウスもこっち側なんだから黙って」
「……あの、テツ君、私。夢でも見てるのかな？」

夢。その一言に、私はシリウスと言い合うのをやめた。

「夢、ねえ」