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123話「舐めんな触んな近づくな」 ページ23

「黒子くん!怪我は!?」
「いえ、……なんか、体が、だるくて」
「アケホシ!バスケ部のやつらも眠らされてる!そいつがエナジーを取ってるぞ!」

シリウスもやって来た。いつものパターンだ。シリウスは黒子くんの近くに来て、肉球を黒子くんの額に当てた。苦しそうだった黒子くんの表情が和らいだ。

「ありがとうございます、シリウス」
「気にすんな。とりあえずここだと怪我するから、動くぞ」
「はい……」

黒子くんとシリウスは起き上がって、私の後ろに下がる。私はパーカーのポケットに手を突っ込んだ。もちろん、取り出すのは変身ペンだ。

「げほ、ッ……なに……?」
「この身体、良いなぁ。舐め回したい」
「桃井さんから離せよバカ」

桃井さんは意識を朦朧とさせながら、私の方を見た。が、化け物に顔を無理やり固定され、化け物の舌が桃井さんの体に近づいていく。私は変身ペンをふって、一瞬で姿を変えた。

「いでよ包丁!」
「ダッセーな」

シリウスのツッコミは全く気にせず、手の中に収まった包丁で桃井さんの首を掴んでいた手を切り落とした。すぱん!と切れて、ドロドロに解けたのを見逃さず、彼女の身体を抱き込む。

「これぞアルカイドさんのカット、略してアルカット」
「クソだせぇ。二度と言うな」
「ふざけただけじゃん!!!」

三メートルほど後ろに下がって、桃井さんの状態を見る。化け物に首を掴まれていたところはあとが付いて居たが、恐らく私が倒せば治るだろう。ひゅーひゅーと不自然な呼吸をしていた。

「桃井さん。大丈夫だよ」

私は桃井さんの額から頬に手を滑らせた。不思議な光が包んで、呼吸が落ち着く。そして、うっすらと目を開いた。

「……ぇ、あ」
「シリウス、黒子くん。あとは任せた」
「え、ちょっと明星さ、ッ」
「急に女子投げんじゃねえ!」

桃井さんを放り投げると、黒子くんは上手くキャッチしてくれた。シリウスは怒っているが、私はまだやることがあるので文句を聞くのはあとだ。

化け物は私が切った手を見つめて、じろりと濁った瞳をこちらに向けた。

「おれの、手」
「うん。汚い手は切り落とさないと」
「返せ、……カエセカエセカエセ!」
「うわ!近づくな!」

ドロドロした液体を撒き散らしながら攻撃してくる。そのドロドロは床や壁をじゅうじゅうと溶かしていく。これはもう、短期決戦しかない。

「眩しいから目閉じててよ!黒子くん!」
「は、はい!」
「アルカイド・カタルシス!」

室内に明るい光が迸った。

124話「ペース配分を考えて欲しい」→←122話「釣ったことはあるよ」



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作者名:白咲ナナ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php  
作成日時:2023年10月22日 1時

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