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121話「危なっかしいですから」 ページ21

「……なんか、不思議な人」
「変な人ですよ。この人」
「ちょっと黒子くん、失礼だよ」

桃井さんは心底不思議そうにしていた。
彼女の思うところはわかる。さっきスラスラと日向先輩や伊月先輩のことを言い当てたところから、相手チームの分析が得意で、そしてよく、覚えている。
でもそれは私に、通用しないのだ。
あの時支払った代償の、一つが影響しているのだけれど。

「テツ、くん?」
「明星さんは、僕達より入部が遅かったんですけど、今は誠凛のマネージャーをしてくれています」
「……め、ずらしいね。テツくんがこんなに女の子と、仲良しなんて」

あ、と気づく。わかりやすく、桃井さんの顔が引き攣った。

「え?そうですか?」
「そ、そうだよ!中学の時なかったよ!」
「……うーん。まあ、明星さん、危なっかしいですからね」
「…………え?」
「……いや、うん。最近は抑えてるよ」
「どこがですか」

黒子くんはあくまで、私の事情をわかっていて呆れた顔をしていた。勿論それは、化け物退治のことであり、私がよく怪我をするからである。

だけど、桃井さんは、別の意味に捉えたようだった。

「うわぁ。黒子それはねえよ」
「なんていうか……罪な男だな」

日向先輩と伊月先輩が黒子くんの発言に引いていた。
その隣で、小金井先輩と土田先輩と水戸部先輩がこそこそ話している。

「はぁ〜。明星ちゃんも桃井さんも、すげえ美女。羨ましい、のか?」
「コガ、なんで疑問?」
「いやぁ、だってさ。桃井さんには、さっき黒子にめちゃくちゃ羨ましいってなったけど、明星ちゃんは美人だけど、なんか、うん……羨ましいって気持ちにはならないっつーか」
「(コクコク)」
「水戸部!そうそう、可愛い後輩って感じになっちゃったから、黒子と並んでも羨ましいにはならない!」
「ええ、今のでなんで分かったの水戸部……」
「え?ツッチーわかんなかったの?」

可愛い後輩。という言葉がやけに引っかかったけど、それに追求する勇気もない。最近なんだか、こうやって喉に言葉がつっかえることが増えた気がする。

「……危なっかしい、ですって?」
「え?」
「あの、桃井さん……?」

桃井さんは、俯いて肩をぷるぷると震わせていた。黒子くんが心配して顔を覗き込もうとするが、その前に彼女は顔を上げた。
なぜか、涙目で、怒りに頬を真っ赤に染めていた。

「ま、……まっ、負けないから!」
「は、はぁ!?」
「テツくんの彼女にふさわしいのは、私なんだから!」

122話「釣ったことはあるよ」→←120話「プールに美少女は鉄板」



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作者名:白咲ナナ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php  
作成日時:2023年10月22日 1時

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