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120話「プールに美少女は鉄板」 ページ20

季節は徐々に変わり、徐々に暑さが顔を出してきた。
誠凛バスケ部は、リコ先輩の指導のもと、プールで基礎トレーニングをすることになった。
緑間君との試合で無茶をした火神君は見学、または雑用をしている。体を動かしたくて仕方なさそうだったけれど、こればかりは選手生命に関わることだ。リコ先輩は「安静にしてろ」の一点張りだった。

「ぜぇ……ぜぇ……きつい」

水の中で体を動かすのは余分に体力を使う。トレーニングを1セット終わるごとに、全員息が絶え絶えだった。小金井先輩がプールのふちに両腕を預けてぐったりしている。

「黒子沈むな〜〜!!!」
「誰か助けろ!」

私はというと、リコ先輩の隣で記録を取ったり、スポドリやタオルを用意したり、やることはごく普通のマネージャーである。
なんだか久々に、こういうそれっぽい仕事をしている。

「あれ〜?誠凛って、マネージャー一人増えてたんですかぁ?」

ふわり。そんな音が似合うような甘い香りがした。隣には、私より少し背の高い、桃色の髪の毛の少女がいた。

「…………こんにちは」

なんとなく人がいた気配はしていたけれど、悪い気配じゃないので気にしていなかったが、よく考えると誠凛以外の人だ。

「う、うわぁ!誰よあの子!」

リコ先輩の驚いた声に、一同もプールから、見知らぬ少女に視線が行く。
スタイルに合わせたかわいらしい水着に、パーカーを身に着けた彼女は、にこりと微笑む。

「桃井さん」

黒子君は、彼女のことを真っ直ぐ見ていた。

「あ、テツくん!久しぶり!会いたかった!」

桃井さん、と呼ばれた女の子は、頬を髪の毛より少し赤く染めていた。そして、休憩でプールサイドに上がっていた黒子君に抱き着く。
完全に、恋する女の子、というやつだった。

「初めまして。桃井さつきです」

桃井さんは、改めて自己紹介をしてくれた。
一同はうらやましそうに黒子君を見ているし、黒子君は特に動じていないし、不思議だ。
桃井さんは、黒子君との馴れ初めから、うちの選手の名前や特徴まで、綺麗に説明してくれた。リコ先輩は、バストのサイズを言われて怒っていたけれど。

「……で、あなたは?」
「はい?」
「……おかしいなぁ。データにない」

桃井さんは、私に近づいて頭からつま先までじい、と観察してくる。

「試合に、いました?」
「はい。いました」
「……名前を、聞いてもいいですか?」
「……明星、Aです」

ああ。彼女も、キラキラしたものを持っている。

121話「危なっかしいですから」→←119話「鉛筆で決まる勝負もある」



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作者名:白咲ナナ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php  
作成日時:2023年10月22日 1時

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