117話「二人で寄り道」 ページ17
「……火神いんのか」
「仕方なくね」
「オイ、失礼だそ！」
心細い街灯の中、目的地まで2人で走る。すると塀の上からやってきたシリウスが火神くんの頭の上に乗った。そして冒頭の発言である。
「こいつがいいって言ったから！」
「ダメって言って大人しく帰るの？」
「んなわけねーだろ！」
「……ま、それもそうか」
シリウスは納得して、火神くんの肩に移る。
「そこ曲がった先の、公園の駐車場」
「うん。火神くんは、駐車場に入らないでね」
「……おう」
不満げだけど、返事が来た。戦いを何回か見ているから、自分が出来ることがないって、わかっているんだろう。
それで、不満があるのは、間違いなく優しさだ。
「じゃ、後でね」
駐車場が見えた。そして、化け物が帰り道の高校生を、襲っているのも。
火神くんとシリウスの方を振り返らず、叫んだ。
「アルカイドクリスタルパワー、メイクアップ！」
絶対に負けないという気持ちがある戦いは、久々だ。
「学生襲ってんじゃねーよおっさん！」
「ぐッ！」
変身してすぐに、駐車場の真ん中にいた化け物に飛び蹴り。
今回の敵は、掃除機と箒をもったおじさん。
恐らくこの辺でボランティアをしているんだろう。
「うるせぇ！お前もこの綺麗にした公園にゴミを捨てるんだろう！！」
「はぁ？」
「殺す！」
高校生は複数人倒れている。その周りにアルミ缶や紙パックを中心としたゴミが転がっていた。
なんて分かりやすい。
「環境問題じゃん……」
「あ？」
「ポイ捨ては高校生が結構悪いかも。ごめん化け物」
「…………少し話がわかるやつじゃねーか」
「あれ？会話してる？」
化け物と会話できてしまい、内心戸惑う。でもわ掃除機の先に刃がついていたり、そもそも変な服を着ているのだ。
「ああ違う違う！スターシードよこせ！」
化け物も私と会話している違和感に気づいたのか、頭をガシガシとかいて攻撃態勢に入る。
掃除機についている刃が嫌な音を立てる。当たったら出血だ。間違いなく。
ロッドを構える。
そして視界の隅。
木陰から、新しい人影が、3つ出てきたのを、私は見逃さなかった。
「スターシリアス、レイザー！」
「うわあああっっ！」
完全に背後からの攻撃だった。化け物は倒れる。
「…………不意打ちなんてサイテー」
「ふざけたこと言ってないで早くなんとかしなさいよ」
「よりによって3人もいるし」
「それは偶然ですよ」
「何そんなに怖がってんの？」
「……あーめんどくせ」
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作者名：白咲ナナ | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/my.php
作成日時：2023年10月22日 1時
