116話「一人でも帰れるよ」 ページ16
※原作といろいろ違います
「よし。今日はこれで終わり」
日も沈み、空腹と睡魔で火神君が夢の世界に飛ぼうとしているところだった。最後の問題はぎりぎり及第点で丸をつけて、ルーズリーフを火神君に渡した。
「ん、……お、終わりか！？」
「うん。多分これ以上やっても意味がないから終わり。英語はコツさえつかめれば間違いなく平均点行くと思う」
さすが帰国子女というべきか。話せるだけで読めないのか、と思っていたがそんなことはなく。問題文の読み方さえわかってしまえば正解数が増えた。
正直、金髪お団子少女より、楽勝だった。
「リコ先輩、これでいいですか？」
「え、ええ！！Aちゃん、すごい！」
「明星、テスト前はこいつを頼むぞ」
「俺たちが何やっても駄目だったのに……たった三時間で……」
残っていたのはリコ先輩と日向先輩と、伊月先輩だった。他の人は帰ったようだ。まだ日が沈む前、黒子君が用事を思い出してあわてて帰ったのは記憶にあるが、そのあとはいつ帰ったかわからない。集中して気づかなかったようだ。
「明日もやるんですよね。国語の準備しておきます。理科と社会は……先輩方にお任せしてもいいですか？」
「そうね。ずっとAちゃんにお任せするのも申し訳ないし……暗記系の科目は任せて」
「……じゃあ、お願いします」
どん、と胸を叩くリコ先輩と頷く先輩二人に軽く頭を下げた。
と、同時に頭の中にはシリウスの声。
(キリ良くてよかったな)
(……ほんとに勘弁して)
化け物は、こんなときにも空気は読めないらしい。
「じゃあ私、今日の所は帰りますね」
「うん。火神、Aちゃん送っていくこと！」
「ウス」
「あ、……ありがとう」
本当は一人がよかったが、断るのも一苦労な気がしたので、流されるまま玄関まで行く。
「じゃあ、明日は八時から。今日は解散！」
「おつかれ。じゃあ俺と伊月はこっちだから」
「火神。ちゃんと送れよ」
「当たり前だろ…、です」
「お疲れ様でした」
特に怪しまれることもなく解散し、曲がり角まで少し早歩きして、三人が見えなくなったところで。
「ね、火神君」
「ふぁあ、……なんだよ」
「寄り道、付き合ってくれる？」
私は変身ペンを振って、火神君に聞いた。火神君は欠伸していた表情を一瞬で驚いた顔に変えた。
「な、」
「それとも、ここで解散する？」
私は一人でも帰れるよ？と煽るように言うと、火神君はは、と笑う。悪い顔だった。
「行くに決まってんだろ」
117話「二人で寄り道」→←115話「特技：理解させること」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 61人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：白咲ナナ | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/my.php
作成日時：2023年10月22日 1時
