検索窓
今日:4 hit、昨日:18 hit、合計:5,945 hit

115話「特技:理解させること」 ページ15

「言うことはただ1つよ」

リコ先輩の目がギラギラとしている。ビシッと人差し指が私に向く。
部活の時よりも意気込んで宣言した。

「このバカ神をなんとかしろ!」
「……はい」

とりあえず、ぐったりしている火神くんの向かえに座る。教科はまず数学からだ。
範囲は最近習ったところ以外ほとんど出ないはずだから、本当に最低限さらっておいて、あとは山をはるしかない。どうせ新しいところをやっても他の人も出来るわけがない。目指せ、平均点だ。

「やるよ」
「……おう」

トートバッグから出したのは1冊のノート。表紙をめくると、火神くんがそこに釘付けになった。

「お前が書いたのか?」
「そうだよ。最初は、展開からか。やり方覚えたら3問くらい解ける。これ、初めに数問出されるのがよくあるパターンだから」
「……」

こくり、と頷いた火神くんの姿は、真剣そのもので。
ふと、あの金色のお団子頭も思い出した。彼女も以前、よく泣きついてきたものだ。そのお陰で、こういうノートを作ったり対策方法が上手になって行ったのだが。
黒子くんが横からノートを見てきた。

「明星さんのノート、すごい見やすいですね」
「黒子くんもやる?」
「……せっかくなので」
「はいどうぞ」



「次これ。問題用紙に必ず数字書くこと。やってみよう」
「うぐ、」
「大丈夫。火神くんほら前の見て。間違いが確実に減ってるから」
「明星さん、これはどうなるんですか?」
「ここはこっちから計算するといいかも。基本マイナスが多いところはミス増えるから」
「なるほど」

「まさかこうなるとはねえ」
「今後、テストが近い時は明星に家庭教師ついてもらうしかねーな」

リコと日向ら2年生は、少し離れたところから3人を見守っていた。
数学になってから、一気に空気が変わった。正確には、マネージャーである明星が来てからなのだが。彼女はピリついた空気の中、いつも通りだった。疲れ果てた火神を前にして、1冊のノートを出して、暗い言葉をかけることなく始めた。すると火神はこれでもかと集中し、黒子も便乗して勉強を始めた。

「お!正解じゃん。じゃあ次、これを使った別の単元行こう。ノート次開いていいよ」
「よっしゃ!……初めて数学まともにできた気がする」
「いい事じゃん」
「明星さん、できました」
「はい。黒子くんも正解。理解が早くて助かります」
「明星さんは、魔法使いか何かですか?」

黒子の一言に、明星は思わず吹き出した。

「まさか、得意なだけだよ」

116話「一人でも帰れるよ」→←114話「無意識に魅了」



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (21 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
61人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:白咲ナナ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php  
作成日時:2023年10月22日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。