115話「特技:理解させること」 ページ15
「言うことはただ1つよ」
リコ先輩の目がギラギラとしている。ビシッと人差し指が私に向く。
部活の時よりも意気込んで宣言した。
「このバカ神をなんとかしろ!」
「……はい」
とりあえず、ぐったりしている火神くんの向かえに座る。教科はまず数学からだ。
範囲は最近習ったところ以外ほとんど出ないはずだから、本当に最低限さらっておいて、あとは山をはるしかない。どうせ新しいところをやっても他の人も出来るわけがない。目指せ、平均点だ。
「やるよ」
「……おう」
トートバッグから出したのは1冊のノート。表紙をめくると、火神くんがそこに釘付けになった。
「お前が書いたのか?」
「そうだよ。最初は、展開からか。やり方覚えたら3問くらい解ける。これ、初めに数問出されるのがよくあるパターンだから」
「……」
こくり、と頷いた火神くんの姿は、真剣そのもので。
ふと、あの金色のお団子頭も思い出した。彼女も以前、よく泣きついてきたものだ。そのお陰で、こういうノートを作ったり対策方法が上手になって行ったのだが。
黒子くんが横からノートを見てきた。
「明星さんのノート、すごい見やすいですね」
「黒子くんもやる?」
「……せっかくなので」
「はいどうぞ」
*
「次これ。問題用紙に必ず数字書くこと。やってみよう」
「うぐ、」
「大丈夫。火神くんほら前の見て。間違いが確実に減ってるから」
「明星さん、これはどうなるんですか?」
「ここはこっちから計算するといいかも。基本マイナスが多いところはミス増えるから」
「なるほど」
「まさかこうなるとはねえ」
「今後、テストが近い時は明星に家庭教師ついてもらうしかねーな」
リコと日向ら2年生は、少し離れたところから3人を見守っていた。
数学になってから、一気に空気が変わった。正確には、マネージャーである明星が来てからなのだが。彼女はピリついた空気の中、いつも通りだった。疲れ果てた火神を前にして、1冊のノートを出して、暗い言葉をかけることなく始めた。すると火神はこれでもかと集中し、黒子も便乗して勉強を始めた。
「お!正解じゃん。じゃあ次、これを使った別の単元行こう。ノート次開いていいよ」
「よっしゃ!……初めて数学まともにできた気がする」
「いい事じゃん」
「明星さん、できました」
「はい。黒子くんも正解。理解が早くて助かります」
「明星さんは、魔法使いか何かですか?」
黒子の一言に、明星は思わず吹き出した。
「まさか、得意なだけだよ」
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作者名:白咲ナナ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php
作成日時:2023年10月22日 1時