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101話「星々は惹かれ合う」 ページ1

私の歌が終わるタイミングでやってきた3人は、とても真剣な表情をしていた。

真ん中にいる、黒髪の少年と、目が合う。

僅かに。私しか分からない程度に目を見開いた彼は、やがてすぐに、挑発的に笑う。
マイクを口元にあてる。

「みんな、待たせてごめん」

次の瞬間、観客席からは悲鳴と、大丈夫だよと肯定的な返事ばかり返ってくる。私は、このままそっと下がろうと、じりじりとステージ裏へ移動していた。

しかし、いつの間に、銀髪の少年の手が、腰に回っている。

「っ、」
「逃げるなんて許さないからね」

腰に回したのはもちろん観客にも見えている。一気に阿鼻叫喚となった会場だが、ステージ上は全く観客の声は届いていない。

「皆様。私達のハプニングを、彼女が繋いでくれました。感謝も込めて、最後に彼女と歌いたいと思います。……ジョイントコンサートですし、彼女の歌が素晴らしいことは、皆様がよくお分かりでしょう?」

茶髪の少年は、悲鳴を無視して、声を張り上げる。一瞬静かになったタイミングを逃さずに、みちるさんが演奏を始めた。

周りを気にせず、思わずみちるさんを見た。しかしみちるさんは、真剣な表情そのもので、バイオリンを響かせた。はるかさんは、彼女の演奏にため息を一つだけつき、伴奏を加え始める。

銀髪の少年に腰を抱かれたまま、私はステージの中央まで連れてこられた。ようやくそこで手を離されるが、前奏が終わりそうだった。つまり、逃げ場がない。

目を閉じる。

ここまで来たら、全員黙らせてやる。
そう思いながら、私はマイクのスイッチを入れる。

こうして、星々は惹かれ、奇跡的に調和したのだ。



「…………きみ、は」

珍しくチームメイトが熱弁していたのが聞こえて、珍しくテレビをつけた。いや、海王みちるの演奏が素直に気になったというのもある。彼女の演奏は、参考にしているところがあるから。

でも、テレビに映っている彼女の姿から、目を離せない。
あまりに信じられなかった。
脳に入ってくる情報を、処理できない。

━━━━だって、君は。

「…………生きて、いたのか」

黄色い左目が、赤くなった。
両目から涙が一筋ずつ、こぼれ落ちる。

「……A、明星、A。…………………すまない、おれは、……おれは……」

名前を呼ぶと、心が震えた。
言葉にならない感情が溢れる。
自分の嗚咽をかき消すように、テレビの音量を上げる。
彼女が少年たちと奏でる歌声に、さらに涙がこぼれ落ちた。

102話「歌って楽しいんだ」→



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作者名:白咲ナナ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php  
作成日時:2023年10月22日 1時

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