運命のヒト【さとみ】

距離 ページ3

電車に乗るたびに
彼女の姿を探す日々が続いた。

今日も疲れた体をひきずって
電車に乗り込む。

そんな体の状態でも
きょろきょろとあの姿を探している。

さとみ「！！」

見つけた。

久しぶりに見た綺麗な姿に
心が浮きだっている。

俺は前回に懲りず
ひたすら彼女を見つめ続ける。

……あれ、なんだか様子がおかしい。

彼女の周辺を確認してみる。

彼女の腰辺りで不自然に動く手が見えた。

俺はそれを見つけた途端、
何も考えずにその現場に近付いて、

彼女の背後に立った。

俺の後ろにいるおっさんが小さく舌打ちした。

俺が目ぇつけてる女のケツ触んじゃねぇ。

いい女なのは共感するけどよ。

さとみ「……」
「……」

やべぇ、近付いてしまった。

思ったよりも小さい身長。

ほんのり優しい香りがする。

俺は変な気を起こしそうで
視線を上に傾けた。

電車が止まるたびに
彼女は周りを気遣って体を動かすから、

その優しい香りが俺の鼻をくすぐる。

あー、やべぇ。

酔ってたら完全に触ってる。

こんなんもう拷問じゃん。


彼女が降りる駅につく。

あの一回で完全に覚えた。

彼女はちらっと俺の方を向いて
ぺこりと頭を下げていった。

間近で見たその顔。

思った以上に整っていて
俺はドキドキしながら会釈を返す。

大きくぱっちりとした目。

スラリと通った鼻筋。

ぷっくりと紅い唇。

彼女が人混みに消えるのを確認してから
俺は自分の顔が熱いことに気付いた。

やべぇ、どうしよう…

完全に虜だ。


少し縮んでしまった君との距離。

その喜びを家まで持って帰って
何度も蘇らせる。

そろそろ歯止めが効かなくなりそうで、

その恐怖を抱えながら

優しい香りを思い出しては
その幸せに浸った。


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距離

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