運命のヒト【さとみ】

飲みなおし ページ15

Aさんを無理矢理起こして
運転手さんに住所を言わせて
お札を何枚か握らせて帰してから、

俺は意外なほど冷静に
しっかりとした足取りで歩いていた。

理性が勝ったんだと思った。

後味の悪い別れ方で
むしゃくしゃしているんだけど、

本当に意外なほどまっすぐ歩いている。

いつか電車で見たAさんのように
淡々とまっすぐを見てる。

考えたくないことがあって
それに必死で耐えているとき、

人はこうなるんだと知った。

だから、Aさんはあの時
今の俺と同じような気持ちだったのかもしれない。

全く知らない駅で泣いていたのも
例の洒落た格好の男が原因だろう。

そいつに悩まされて

……俺に助けを求めているのか。

さとみ「……はぁ…」

もういいや、今日はもう飲もう。

酔っぱらって忘れればいい。

さとみ「もしもしころん？飲み行こ」

こいつなら酔っぱらった俺の言葉を
聞き流してくれるだろう。


指定した店で待ち合わせる。

ころん「さとみくん今日飲みに行ったんじゃなかったの〜」
さとみ「酔ったから帰した」

二人で席につく。

ころん「連れて帰れば良かったのに」
さとみ「俺はころんじゃないからそんなことしません〜」

本当はがっつり連れ去ろうと思っちゃいましたけど。

でもまぁ、

さとみ「『信じてるよ』って…言われたんだよ」

信じられてるから
下手なことはできねぇ。

ころん「さとみくんもチョロいなぁw」
さとみ「うるせぇよw」

二人で乾杯して
男臭い中恋話をする。

さとみ「ころんのこと言ったよ」
ころん「へぇ、なんて？」
さとみ「『変な人だよ〜って言っといてください』って」

Aさんの真似をして言う。

ころん「ジェルくんよりマシでしょ」

いやぁ、マシって言うかなぁ…

さとみ「ジェルと同じくらいえろいよAさん」

自分の魅せ方知ってるよなぁって感じ。

ころん「Aさんってゆーの？」
さとみ「そー」

なんかころんに情報垂れ流してるけど
こいつすぐ惚れそうだから怖えな。

さとみ「俺のだから取るんじゃねぇぞ」
ころん「まだ自分のものにもなってねぇのにw」

そりゃそうやけどさ。いつか落とすから。

ころん「品定めしてあげるよ」
さとみ「んんwww」

Aさん予想当たってるよ。

こいつ品定めするつもりだったらしいわ。

さとみ「予定あわせてもらうわw」
ころん「えろいお姉さん楽しみ」
さとみ「やめろってw」

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