憎しき彼に華を【神威】

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その背中を見送って、ソイツに言われた通り医務室まで足を運んだ。ズキズキと痛むのは折られた腕だけではないが、まぁ、常人よりもはるかに多い傷を負ってきた体だ。今更この程度で悲鳴を上げる程ヤワではない。


そうして辿り着いた真っ白な無機質な部屋。消毒の匂いが鼻につくそこで待ち受けていた医者は私の腕を見るや否や、サッと顔を青ざめさせて「こりゃ酷い」と一言。




「炎症が酷いですね……、あまり腕を動かさないように、安静にしててください」


『包帯の取り換えとかいらないの？』


「あぁ、綺麗に治療されてますから」




にこやかに笑顔を浮かべる医者も、神威の治療の腕前には一目置いているようである。


確かに……、果てしなく悔しい事に、ーーーアイツの治療は驚く程に綺麗、だった。



普段手を使うのが面倒だからと、あちらこちらの扉を蹴破って入ってくるような、横暴で身勝手で雑な男なのである。

それなのに、あの時の手裁きは、とても繊細で優しくて。


日ごろからしているからなのだろうけれど、それにしたってあんなに手先が器用だとは聞いていない。
驚き過ぎて、絶好の暗殺チャンスを見逃してしまったではないか。




(……あー、ことごとく腹立つなぁ)




何をするにしてもアイツは笑って先に行くんだ。
ーーーーまぁ、そうでもないと、追いかける意欲も削がれちゃうんだけど。

さっさと追い抜いて、ちゃっちゃと首執って、お国から報酬金を貰おうじゃありませんか。




『ーーーさぁて、またいっちょ殺りますか』




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