三百三十三夜。 ページ35
『私にもきちんと名前がある』
「あーAだっけ?確か、宿ではこう言ってたな。アレンの事が好きな只のエクソシストだって」
『その通りよ。でもそれを言うなら、貴方だって想いを寄せる人は居たんじゃない?』
は?と首を傾げるネア。しばらくして、何かを思い出したように視線は下を向いた。
「…あぁ、恋心ね。そんなもの抱いていた時もあったな。でも今はそれどころじゃないし、子どもの頃だったから恋かどうかも分からない。それよりも、だ。
あんたについての情報を思い出した。数少ない女エクソシストの中でも特に秀でた戦闘能力で、元帥にまでのぼりつめた、黒の教団の支柱の一人。そんな奴がなんで俺らのことを知ってるんだ。突然変異のメモリー持ちか?」
ネアはもう幼い頃を共に過ごしたAのことを覚えていないのだろうか。私が夢の中で聞いた声はとても優しくて、恋心を『そんなもの』と話す今のネアとは似ても似つかない。
『昔の恋だったのね。そのお相手の名前は?覚えていないの?』
「オレの質問に答えてくれないかな」
『私の質問に先に答えてくれたら、おのずと分かるかもよ?』
だいぶイライラしている様子のネア。大きな舌打ちをしてその名を口にした。
「A」
『私と同じ名前ね』
「あぁそうですね、あんたと同じ……、同じ……?」
何かが繋がり始めたのか、ハッとして顔を上げるネア。しかしその表情はそんなもの絶対ありえない。という気持ちの方が強いように見える。
『多分、あなたの思っている通りだと思うよ』
ニコッと微笑み、私は頭に響いたワタシの声を代弁した。
『この傷、覚えていませんか?』
困ったような哀愁漂う笑みを浮かべ、胸元を見せるA。ネアは一瞬の間の後、顔を強張らせた。
「なんで……それがあんたの身体にあるんだ」
『その意味はご自分でお考えください。ネア様』
「様…?貴女、もしかして…」
隣に立っていたリンクも私の胸元を見るなり、ぎょっと目を見開く。そして私の顔をまじまじと見た。
「今の貴女は、無名のノアが表出しているのか…?しかし、14番目のような殺伐な気は感じない」
『!』
人の気配や雰囲気に敏感なリンクが分からない程に、私の中のメモリーは私自身に溶け込んでいるのだろう。
サードを止める為に懇願した時は断られたというのに。
『(じゃあ私かメモリーかを見極めるには口調しかないってことになるのね)』
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あずさ - お忙しいとは思いますが、更新楽しみにしています!! (2020年1月28日 18時) (レス) id: dc5172fd12 (このIDを非表示/違反報告)
Rico(プロフ) - こんにちは。アレンくんと夢主ちゃんの今後が楽しみです。お忙しいかもしれませんが、更新頑張ってください! (2019年8月17日 1時) (レス) id: 3a6a1a4cba (このIDを非表示/違反報告)
歩。(プロフ) - 更新お待ちしてます! お忙しいとは思いますが楽しみにしています! (2019年4月23日 4時) (レス) id: f251146aad (このIDを非表示/違反報告)
ノルン(プロフ) - 楽しみにしてます(`・ω・´)ゞ (2018年10月20日 19時) (レス) id: 265a916812 (このIDを非表示/違反報告)
パオパオ - めちゃおもしろいです!!!続き楽しみにしてます!!!! (2018年1月20日 21時) (レス) id: 89165a1c38 (このIDを非表示/違反報告)
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