三百三十四夜。 ページ36
今伝えたいことはこれだけなのか、ワタシの声は脳に響かなくなった。
胸元が開きっぱなしになっていることに気付き、慌ててボタンを閉める。
そういえば、千年伯爵に遭遇してからワタシは胸元の何かを見せていた。それについては私も知らされていない。
ボタンを閉める手を止め、視線を下に落とした私は先ほどのリンクと同じく目を見開いた。
『何、これ…』
胸元、厳密に言えば鎖骨と胸の間に、大きな古傷が陣取っていたのだ。古傷ではあるが、傷を治すために新しく出来た周りと少し色の違う薄い皮膚がつっぱっており、少し傷をつければ簡単に裂けそうだった。
いつこんな傷が…?少なくとも教団で過ごしていた時にはなかった。
考えられるのは母胎保管室で攻撃を受けた時…いや、いくら全身を鏡で見る機会がないからといっても胸元なら気付くはず。
『(もしかして、ワタシと話をしてから…?伯爵やネアが知っているということは、それほど昔に負った傷だということになる)』
それほど昔につけられた傷が、今になってこの身体に現れた。
メモリーを受け入れ理解したことで、身体が過去の記憶を思い出しているのだろうか。
思わず不安になって自分の身体を触り他におかしな所がないか確認するも、これといった傷は他になく少しホッとする。
『(後で詳しく聞けると良いのだけど)』
「あんた…ホントに何者だ…」
未だに信じられないという顔をしてこちらを見上げるネアを、私は満面の笑みで見つめ返した。
色々な含みを持たせた私の笑みを見て、リンクが今までと少し違う私の雰囲気を感じ取ったようで、顔を引き締める。
「…A、貴女が今どちらなのか分かりませんが、14番目も表出している今、都合が良いのでお伝えします」
気付けば、隣に立っていたリンクが右膝をついてその場に跪く。
「我が主君ルベリエがクロス・マリアンと密約を交わし、私をここへ遣わしました。14番目と無名のノアを護れ、と。
この3ヶ月間ずっと待っていました。ウォーカーでもAでもない、あなた方と接触できる瞬間を…」
リンクはそこまで言うと、顔を上げて私とネアをゆっくりと交互に見る。そしてハッキリと言った。
「私は新たな協力者です。この命、あなた方の好きに使って構いません」
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あずさ - お忙しいとは思いますが、更新楽しみにしています!! (2020年1月28日 18時) (レス) id: dc5172fd12 (このIDを非表示/違反報告)
Rico(プロフ) - こんにちは。アレンくんと夢主ちゃんの今後が楽しみです。お忙しいかもしれませんが、更新頑張ってください! (2019年8月17日 1時) (レス) id: 3a6a1a4cba (このIDを非表示/違反報告)
歩。(プロフ) - 更新お待ちしてます! お忙しいとは思いますが楽しみにしています! (2019年4月23日 4時) (レス) id: f251146aad (このIDを非表示/違反報告)
ノルン(プロフ) - 楽しみにしてます(`・ω・´)ゞ (2018年10月20日 19時) (レス) id: 265a916812 (このIDを非表示/違反報告)
パオパオ - めちゃおもしろいです!!!続き楽しみにしてます!!!! (2018年1月20日 21時) (レス) id: 89165a1c38 (このIDを非表示/違反報告)
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