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「……あった。これで少しは寒くないかも」
「カルンで貰ったもの?」
「うん。女の子の弟子がいるっていったら、可愛い布を沢山くれて」
流しの羽根馬車を呼び、今はアトリエに向かって移動している最中。
女性同士が良いだろうとキーフリーはココを私の隣に座らせた。私に寄りかかって寝ているココを見ると、本当に大きくなったなぁとしみじみ感じる。
丸窓から外を眺めるキーフリーの横顔は普段と変わらない、いつものキーフリーだ。
でも、ココの記憶をどうするかと口をつぐんでいた時はなんだか別人に見えた。
「ねぇキーフリー。聞いても良いかな」
「……ココの記憶を消さなかったことについて、だろう?」
静かに頷けば、キーフリーは少し間を置いて口を開いた。
「絵本を売った魔法使い。僕は彼らじゃないかと思うんだ」
「彼ら……?」
あんな危険な魔法を売る魔法使い…。ココのお母さんの動きを一瞬で封じたあの魔法。
「!禁止魔法……つばあり帽……!?」
「そう。ちょっと、色々あってね。彼らの行方を追いたいんだ」
そう言うとまた風景を眺め始めるキーフリー。その内容については教えてくれなさそうだ。
実をいうと、彼が禁止魔法やつばあり帽のことについて時々情報を集めているのには気付いていた。
でも、それが何故なのかは中々聞けず、今に至るわけだ。
人はそれぞれ個性や性格が違うように、過去や境遇も人の数だけ色々ある。
キーフリーが胸の内に秘めていることなら、無理には聞くまいと私は知らんぷりをしている。
でも、一緒にアトリエを支え、先生をしている者として、無理をするのは見過ごせない。
それなら私は、影ながら手を貸し、見守ろうと決めた。
「禁止魔法が使われたのは4年振りだもんね」
「知ってたんだね。Aはカルンにいた時だったから、もしかして知らないかなと思ってた」
「多分キーフリーが思ってるより、結構活動してたよ、私」
「あれれ?」
キーフリーはふわふわの髪の毛を掻きながら、ごめんごめんと笑う。その笑顔がいつも通りで少し安心した。
「手は大丈夫?痛まない?」
「キーフリーの処置のおかげで何ともないよ……」
門番茨を蒔いて戻った際、ものすごく慌てたキーフリーによって怪我をした方の手は包帯がぐるぐる巻きにされた。むしろこの包帯のせいで大怪我に見える気がしないでもない。
「…私はキーフリーの味方だから。何かあったら言ってね」
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アストル(プロフ) - 通行人Mさん» 2回目のコメントありがとうございます!また来てくださって嬉しいです(´˘`*)ほんとに中々ありませんもんね...私も少しずつわかってきた原作の設定を織り交ぜていこうと考えています。オチをどのようにするか迷いますね.... (2020年2月23日 22時) (レス) id: b8413c3aa3 (このIDを非表示/違反報告)
通行人M - 単行本買ってから思い出して来てみましたー。それにしてもΔ帽子の夢作品増えませんね…設定が緻密でまだまだ謎が多いから難しいんですかね…。これからもちょくちょく覗きますね。 (2020年2月23日 19時) (レス) id: cbf5c5978e (このIDを非表示/違反報告)
通行人M - うわわ…ほんと…好みです……ありがとうございます…… (2019年7月31日 20時) (レス) id: ea843ff10e (このIDを非表示/違反報告)
月夜魔法 ルナ - すごくおもそろかったです! (2018年7月15日 10時) (レス) id: 26180cce76 (このIDを非表示/違反報告)
タルト(プロフ) - 読んでいてとても楽しいです。読みやすく最高です!!これからも頑張ってください、応援しています! (2018年5月17日 19時) (レス) id: ac7dbf19f0 (このIDを非表示/違反報告)
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