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父親は医者だった
母親は父を支える看護師かつ研究員だった
街の診療所で今みたいに大きな病院なんてあるわけでもなかったから良く我が家兼診療所に人が行き交っていた

ある日のことだった
電報が届き山を越えた街で伝染病の患者が出たから助けて欲しいと
父は母にある程度の指南書と私と母を残し、山を越えて行った

「とうさん、行ってしまうの?」

「ごめんよ、A みんなを治して帰ってくるからな」

そう言って私の頭を撫でた
私の父と同じ黒い髪を撫でて
母は私に満面の笑みを浮かべて見せてくれた

「大丈夫よ、A さて、いつも通り『伊原診療所』を通すわよ!」

私は父と母が共に仕事をする姿に憧れたのだ
父は誰よりも格好良く見えたし、母は誰よりも美しく見えた

そんな父と母の大切な場所『伊原診療所』を私は継ごうと幼いながらにも思っていた

ーだが悲劇は音もなく私達に襲いかかってきた
私達の街にも伝染病が蔓延し始めてきたのだ
その伝染病はとても厄介で父がいない中、母が突き止めた
伝染病の原因は、水だった
母は私に移らない様懸命に対策を取ってくれた
母が原因を突き止めたのにもかかわらず、街の者達は『父以外の言葉は信用しない』との一点張りだった

すると電報が届いた
隣街で父が伝染病によって亡くなったと
父と母は二人ではないと、これからの命も今ある命も救えなかった
母は泣かなかった
私の頭に手を乗せ、ひまわりの様な眩しい笑顔を見せた

「大丈夫よ、A 心配することなんて何にもない ...卑怯だと貴方は私を罵るかもしれないけど、思うかもしれないけど....!

この街から出よう

まだ私とAはかかってない
これ以上....」

「まちのひとに言ったってむだ、でしょ?」

「!!...えぇ、だから わかってくれるよね?」

「はい」

必要な分の荷物だけ持った
好きな本は二冊に絞り、好きな服は三着に絞った
我が家は大きかった
診療所もなにも大きかった

門を潜った時、家が心なしか灰色の空の所為でやけに厭に感じた
道端には捨てられた死体
伝染病は酷いもの故、内的だけではなく外的にも外傷を負うものだった
目をそらす母と訳がわからない私
今でも脳裏にその死体の山々を覚えている

・・・


あと少しで街を出るところだった

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煎餅布団(プロフ) - レモンさん» ありがとうございます!更新頑張ります…! (2018年5月15日 23時) (レス) id: 2de6b0e185 (このIDを非表示/違反報告)
レモン - 応援してます!更新頑張ってください!!d=(^o^)=b (2018年5月15日 23時) (レス) id: c6018d0b79 (このIDを非表示/違反報告)
煎餅布団(プロフ) - ジンジャエールさん» ありがとうございます!私の作品で感動してくださるとは…!感無量です泣 コメントありがとうございました! (2018年1月20日 11時) (レス) id: 2de6b0e185 (このIDを非表示/違反報告)
ジンジャエール - とってもおもしろいし感動しました!続きを楽しみにしてます! (2018年1月20日 8時) (レス) id: ab2c526f84 (このIDを非表示/違反報告)
煎餅布団(プロフ) - 紅夜桜さん» ありがとうございます! 今夜、更新します!お楽しみに!← (2017年11月30日 15時) (レス) id: 2de6b0e185 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:煎餅布団 | 作成日時:2017年10月8日 14時

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