不死川さんといっしょ(物理)【不死川実弥】

物理。陸 ページ8

朝。私は、小鳥のさえずりと違和感で目が覚めた。
柔らかく差し込む光に目をゆっくりと開けると、目の前には不死川さんがいた。


『…え！？』


「……うるせぇ……」


何故私は抱きついていたのか。おかげで腕が寝違えて痛む。
寝起きの頭は、この衝撃でもうぱっちりだ。
何より、恥ずかしい。私たちはこの格好でずっと寝ていたのだろうか？
気を紛らわせようとブン！と効果音がつくくらいの速さで上体を起こせば、
反対方向に引っ張られる。こんなこと昨日もあったような。


『うわ…！』


一瞬手が繋がってるの忘れてた。
引っ張られたことで倒れこむ私の体は、不死川さんに覆いかぶさるような形で静止した。
その瞬間彼の目が覚めたのは不幸だと思う。そして私の顔は真っ赤だと思う。


「………は？…」


『…おはようございます。この状況なのは二割は不死川さんのせいです…ごめんなさい。』


「…そうかよ…とにかく退けや…」


すすす…と慎重に動いて不死川さんの上から退けば、手がじんじんして痛かった。
これ、あと六日だぞ。無理だろ…。


「…お前のせいで俺は寝れなかったんだからな…覚えてろや…」


『え、私のせい…ですか？』


「お前が起きた時のこと思い出してみろやァ…」


私寝相悪かったっけ。と考えれば、確かに…朝、抱きついていたような気がした。
またもやぶわっと顔に熱が集まるのがわかる。やってしまった。


『その節は！本当に、すみません…！！』


「…あァ、次は気ィつけろよ…俺が寝れねぇ」


『はい！必ずや！』


…ここから、二人同時に立ち上がろうとして二人して転んだのは割愛する。



朝ごはん。
不死川さんが右手で、私が左手で出来ることをやったら思ったより上手くいった。
片手で卵焼き作った不死川さんはすごいと思う。
ちなみに私は左手で茶碗を一つ割った。


「いただきます」


私は左手で箸を持ち、パクリと食べる。
卵焼きはふわふわで、片手で出来る芸当じゃないなあと感動した。
柱ってみんなすごいな。そう思った。


さあ、食べ終わった私たちには、今日も試練が訪れる。


『不死川さん、お昼の材料残ってました？』


そう聞けば、辺りを一つ一つ不死川さんは確認していく。
ちょこちょこと一緒に動きながら全てを見回ったあと、彼はこの世が終わったかのような絶望の表情を浮かべた。


「……ねェな」


この格好(恋人繋ぎ取れない状態)で、買い物に行くという試練である。

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