変わらぬ明日を祈るように 【OS】 花櫻 ページ8
Oサイド
「見て見て、智くん」
まだ二人っきりの楽屋。
座る場所なんていくらでもあるのに、翔くんは俺の隣に腰掛け、甘えた声で袖を引っ張る。
クッソ……可愛いな俺の恋人。
「じゃーん!」
「おぉ、ドラマやるんだ」
見せてくれたのは分厚い台本だった。
普段よりもページが多いそれは、セリフが多い役なのだということを物語っている。
「中身見してよ」
「ダーメ!もう、あなたすぐに見たがるんだから笑」
「どんな話なの?」
「えっとね、鬱病になった主人公とその周りの人たちのヒューマンドラマ…ってとこかな」
「鬱病になっちゃうの? 翔くんが?」
「そ。俺が」
芝居の話なのに胸がぎゅっと痛くなる。役とはいえ翔くんが苦しむのは嫌だ。
「痩せなきゃなぁ…あ〜、スイーツ食えねぇじゃん」
「ちょっとくらい食べたってヘーキヘーキ」
何故かオネエっぽい口調でおどけてくふっと笑う。
あぁ、こんな笑顔をずっと見ていたい。
「しんどくなったらいつでも言いなよ、翔くん」
まだセットしていないふわふわの髪を払って額にちゅ、とキスを落とすと
何度やっても慣れない翔くんは顔を真っ赤にさせた。
「だ、大丈夫だもん」
・
だけど異変はすぐに出始めた。
「翔ちゃん、ここに差し入れ置いてあるよ? 食べないの?」
「あー……うん、あんま腹減ってないから。相葉くんにあげる」
楽屋でみんなが昼食をとる間、一人何も食べようとしない彼。
「翔さん、今度のライブのことで相談があるんだけど……翔さん?」
「……え、あ、ごめん。ぼーっとしてた笑」
空白の時間ができれば、すぐに独りの世界へ閉じこもってしまう彼。
「……ね、翔ちゃん。疲れてない?」
「ん? ぜーんぜん大丈夫」
鋭いニノの言葉にぎこちない笑顔で「大丈夫」「平気」を繰り返す彼。
翔くんに何かあった。
疲れ切った顔でソファに体を沈める彼が物語っていたのは、それ以外の何でもなかった。
今隣にいる翔くんは
隣にいるはずなのに、遠くにいるようで
翔くんのはずなのに、翔くんじゃないみたいで。
二人きりになったタイミングを見計らって、翔くんを思いっきり抱きしめる。
「わっ……ど、どしたの智くん」
「いいからじっとして」
腰に腕を回して腕の中にすっぽりと収めると
その体が前よりも細く小さくなってしまったことが分かって
どこにも行くんじゃねぇって想いを込めて、ずっとずっと、ただ抱きしめていた。
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大翔(プロフ) - kkさん» 主催の者ではなく、練習曲29番を書かせて頂いただけの私ですが、主催の方がまだ作者さんを続けていらっしゃるのか分からないので、かわりにコメント失礼します。コメントしていただいて本当にありがとうございます! (2020年1月24日 23時) (レス) id: 7ff2e3a340 (このIDを非表示/違反報告)
kk - 素晴らしい作品!全部すごく良かったです。s受け尊し。 (2020年1月24日 23時) (レス) id: c2bfb0fe32 (このIDを非表示/違反報告)
向日葵(プロフ) - Sさん» 突然失礼します、向日葵です。こちらはあまり更新しないのですが、青い鳥にて騒いでることが多いのでよろしければ…(@air__ap) (2018年2月1日 16時) (レス) id: 76ade9e498 (このIDを非表示/違反報告)
S(プロフ) - 返信ありがとうございます!! 早速検索かけます! (2018年1月28日 3時) (レス) id: 539aafff22 (このIDを非表示/違反報告)
あま音(プロフ) - Sさん» 恋色は青い鳥(@Kw_C2a)もやっておりますよ(*^^*) (2018年1月27日 9時) (レス) id: 95b1de6e50 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:「赤い櫻は冬に咲く」製作委員会 x他6人 | 作者ホームページ:
作成日時:2018年1月21日 9時