【あんスタ】ゆっくり、ゆったり、のんびりと【朔間零】 (ページ6)

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4話ページ6

『あのさー、朔間くん。

　寝ぼけてるのは分かるんだけどさぁ、』

「……煩いと言っておるじゃろ」

『いやあのね、

　ほんとにこの体制キツイから』

この体制、というのは、

零によって中途半端に棺桶に引きずり込まれたことで

上半身は棺桶に、

下半身は外に投げ出され

半ば棺桶に食われた様になっている、

この状態のことである。

「………………なんでそんな格好しておるんじゃ?」

『半分君のせいなんだよなぁ』

だんだん目が覚めてきて

暗闇で眉根を潜める零に、

高速ノックについては、ごめんねえ、

などと謝罪したA。

ちなみにそこには誠意の欠片もない。

「おいっ!!

　大丈夫かA……センパイ!!

　吸血鬼ヤロ〜もさっさと起きやがれ!」

丁度よいタイミングで

晃牙が棺桶の蓋を無理矢理開け、

二人を薄明かりの照明の下に晒す。

「おお、わんこや。

　寝起きの耳には少々響くぞい」

「テメ〜の耳のことなんざどうでもいいんだよ!」

ぎゃんぎゃんと騒ぐ二人を

暫く眺めていたAだったが、

やがて一つ手打ちをすると

零に向かって声をかける。

『椚せんせがねぇ、補習受けろとかで

　朔間くんのこと呼んでたよ〜

　ということを伝えるために来たのでした〜』

じゃ、と言って彼女はくるりと背を向けた。

「それだけかえ?」

零はキョトンとしてAを見る。

『それ以外に用があるときは、

　こんな時間じゃないもーん』

わかってるでしょ〜?

と肩越しに微笑う少女に、

零は、そうじゃったな、と返し、

それで会話は終わった。

少女のいなくなった部室は、

埃の匂い、

晃牙の香水の匂いと、

甘い、柔らかな匂いが少しだけ残った。