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私立夢ノ咲学院。
の中の、ガーデンスペース。
一角に咲く薔薇の茂みに隠れ、
一人の少女が横たわっている。
一見すると倒れている様にも見えるが、
気持ち良さそうに小さく寝息を立てている。
薄緑の長髪は芝に溶け込むように散らばり、
紅い薔薇に囲まれる美しいその姿は
さながら、物語の眠り姫の様だ。
どんな夢を見ているのか、
時折小さく唸りながら
『…ドーナツが、ドーナツが〜…』
などとぼやいている。
「Aはほんに平和そうじゃのう〜…
我輩羨ましいぞい」
その青年は、彼女のすぐ側に
あまりにも突然に、音もなく現れた。
太陽を厭うように木陰に隠れ、
彼女の幸せそうな寝顔を、
まるで宝物でも見るかのように眺めている。
『んー…』
彼女の長い睫毛が震えた。
続いて、瞼がゆるゆると持ち上がり
溶かし込んだ蜂蜜色の瞳が現れる。
眠たげに目を擦り起き上がった彼女、
__Aは、黒髪の青年に視線を向けると
何故か『ドーナツ？』と
呂律が回っていない口で呟いた。
「我輩はドーナツじゃないぞい」
『んー…？
…ほんとうだ。朔間くん、だねぇ。
おはよ〜。』
「うむ、お早う。
もう昼前じゃがのう。」
ややおかしな間で喋るAに、
青年、朔間零は定例といった様子で返している。
『昼前か〜、
じゃあ、お昼ご飯を食べないとね。
朔間くんも、一緒に食べる？』
「そうじゃのう。
今日は水曜日じゃし、
そうするとしよう。」
よっこいせ、と声を出し、
立ち上がった零に続いて
Aもゆっくりと立ち上がる。
『食べたらそのまま寝そうだなぁ。
そうなったら、朔間くんおこしてね〜』
「お主どうせ起きぬじゃろ」
『まあねぇ』
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作者名：チョコトースト | 作成日時：2018年4月30日 22時
