【黒バス】夢見る少女じゃいられない【短編集】

例えば . 赤司様 @ 梓 ページ34

｢例えば、あと1時間ほどで
この地球がなくなるとするじゃない？
キミならどうする？｣


色の違う瞳を見据え
口元に弧を描きながら彼女はそう言った


｢面白い事を聞くね
また小説でも書くのかい？｣


彼もまた彼女を見据えながら言葉を返す

彼女の趣味。
いや、暇つぶしと言った方が妥当だが、
日頃から何か思いつくと
彼女は物語を書いていた。

彼はそれを知っていた。
だからあえてそう返したのだ。


｢…これは小説にもしないわよ。
ただ、ふとそう思っただけ｣



呆れたように肩を落とすと
彼は、そうかと呟いてから机に肘をつき
何かを考える素振りを見せる

ただ、そうしているだけなのに
こうも絵になるのは
彼以外、彼女は知らなかった。



｢僕なら――…。｣



少しの間がとても長く感じる

ただ互いに目を合わせているだけであって、
それもたった3秒ほどの事であろうが
彼女にはとても長く感じた。



｢きっと、普通にいつも通りの事をするよ｣



彼の答えに彼女の身体はピクリと震わせ
そして、感情を悟らせないような声音で何故？と一言返す。



｢では逆に問おう。
キミはたった1時間で一体何をするつもりなんだい？｣

｢…確かに、そうね……。｣




彼女は少し目を伏せた。
何を考えているのか、
何を感じているのかなんて彼には分からない。


けれど、彼女もまたそれだけで絵になっていた。



｢……でもあたしなら、
やり残した事を必死に成し遂げるわ｣



やっと開いたその口から出た言葉は
彼とは極端の答えだった



｢と、いうと？｣

｢仮の話よ？
あたしに好きな人がいたとして、
その人に告白したりとか
そういうロマンチックな事をしたいものよ｣


｢キミらしくないな、そんな事言うなんて｣

｢あたしだって女よ？
いいじゃない、まだ夢を見ても｣



そして微笑みながらうっすらと目を開け
彼の頬に手を添える


相変わらず彼の目には動揺の色は一切見えない。



｢………｣



そして彼らの距離がゼロになる寸前。
彼女の方から動きを止める



｢つまらない男よね、赤司くんって｣

｢それに比べてキミは面白い女性だよ｣



たったそれだけ言葉を交わした後、
ゆっくりと身を離す。

その後、彼はにやりと口角を上げた



｢A、小説が出来たら是非僕に読ませてくれ｣


驚きを隠せずにいる彼女を
彼はただただ見つめた。

そして、少し不機嫌そうに
彼女は言った。


｢…本当につまらないよ、赤司くんって｣

モデル . 黄瀬様 @ カトリーヌ。→←無自覚 . 高尾様 @ ぽんず

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