【黒バス】夢見る少女じゃいられない【短編集】

公園 . 氷室様 @ 梓 ページ4

最近俺はとある公園に通っている

バスケをするためではなく、人に会うためだ



「辰也くん！」

「こんにちわ」



まだ幼さが残る顔立ちで
俺を見つけるとブランコから
飛び降りて俺の腕にしがみつく

セーラー服を着ているところからして
中学生だろうが、彼女はいつもこの公園にいた



「何でいつもここにいるんだ？」



ずっと聞いてみたかった事だが

どうやら越えて欲しくない一線だったらしく
彼女は下を向いたまま黙り込んでしまった



「…ごめんね、嫌な事を聞いたみたいだ」



そう言うと彼女は左右に首を振ってから
小さな声で囁く



「人を、待ってるの」



人…？
毎日この公園で人を…？

疑問が頭を巡るが
答えは聞かなければ分からない



「大好きな人と、大嫌いな人」



やっと上を向いてくれたが
彼女の笑顔に俺はゾクリとした

中学生がこんな狂気染みた顔をするだろうか



「でもね、もうすぐ来ると思うの」

「大嫌いな人が？」

「…ううん、大好きな人だよ」



大嫌いな人は2度と会えないと思う
彼女はまた小さく呟く

…大好きな人、か



「あ、来た」



彼女が駆けていく方を見ると
そこには優しそうなお婆さんがいた



「おばあちゃん、久しぶり！
元気だった？体は大丈夫？」



嬉しそうにお婆さんの周りを
クルクル回っていてもお婆さんは無反応だった

それでも彼女は言葉を続けるのだ




「…あの」




見ていられなくなって
話しかけると優しい笑顔で俺を見る




「先ほどから貴方に女の子が話しかけて…」




…言葉が途切れた

原因はお婆さんが持っていた花だ





「それは…」

「孫がね、ココでひき逃げにあって…
今日が命日なのよ」





孫…つまり、この少女はもう…




「…Aも生きていたら
貴方ぐらいの歳だったのにねぇ」



そう言ってお婆さんは
公園から出て行ってしまった




驚くどころじゃない
頭が混乱するどころじゃない

この少女は貴方の目の前にいて
貴方が来るのを待っていて
それで…




「ごめんね」




俺の服の裾をギュッと掴んで




「ごめんね」




今度は震えた声で




「…それから、ありがとう」




俺の方を見て無理やり笑う彼女…
今までと違うのは彼女が透けている事


本当に死んでしまっているのだと
ようやく今実感し始めた



「また遊びにおいで、A」



約束をしよう

もう二度と会えないのなら、

もう二度と話せないのなら、


忘れないように
君が俺を縛る約束を…。

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