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最後の花を、あなたに ページ42

「何、何これ…全部燃やせ…?捨てろ…?亡骸はそのままに…?」









時透は瞳を困惑に揺らした。









たった今亡くなった大切な仲間は、何よりも自分を忘れることを皆に望んだのだ。









「忘れることなど…出来るわけが、無いだろう」









どこか怒りに燃えるような煉獄の震えた声に、皆一様に俯いた。









「…行くぞ、お館様に報告せねば」









伊黒がぽそり、と呟いた。









それを聞いた宇髄は、みるみる青筋を額にうかべて伊黒に掴みかかる。









「ッ伊黒!!!お前、水瀬を本当にここに置いていくつもりか!!!」









「ならばお前はこいつの最後の願いも聞かぬと言うのか!!!!!」









滅多に上げない伊黒の大声に、宇髄はハッとして伊黒を見る。









その瞳は、怒りと悲しみに溢れた辛い瞳だった。









「こいつのたった一つの願いを、何一つ…叶えてやらないつもりか…!」









その言葉に、甘露寺はついにその葉桜色の瞳からポロリと涙をこぼした。









誰にも何もわがままを言わない子だった。









弱音も、小さなお願いのひとつも言わない、






強くて優しい子。









その子の初めてのお願いが、こんなにも残酷なものだなんて。









「そんなの…そんなの無いわよ、Aちゃん」









あなたを忘れて生きていくなんて。









あなたはそれで私たちが楽になれると思って、きっとそのお手紙を書いたんでしょうけど、









あなたの全てを燃やして、無くして。









姿を、


声を、



顔を、








一つ一つ忘れていく度、私達は自らを苛むのよ。









大切な仲間を、あなたを忘れていくことが、どれだけ…辛いことか。









皆しばらく縫い付けられたようにその場から動けずにいたが、1人、また1人と立ち上がる。









そして、Aに背を向けた。









ある者は唇を咬み、






血を流しながら。









ある者は、拳を震わせながら。









ただ、









「ま…ってよ。ねぇ、本当にここにAさんを置いていくつもりなの…?ねぇ…!」









一人を除いては。

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設定タグ:鬼滅の刃 , 死ネタ   
作品ジャンル:アニメ
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なーな - 初見です! 完結お疲れ様でした!めちゃくちゃおもしろかったし感動で涙でしたっっっ!!! 素敵な小説をありがとうございました! (2021年11月30日 15時) (レス) @page45 id: 03957af64f (このIDを非表示/違反報告)
もちゃ - 泣いちゃったw (2021年1月25日 0時) (レス) id: b4bfec10e3 (このIDを非表示/違反報告)
うさぎもち - 号泣しすぎて...う"う"う" (2021年1月20日 22時) (レス) id: 676d0f88d2 (このIDを非表示/違反報告)
さけふろ - 感動です! (2021年1月11日 15時) (レス) id: c7bf1c88de (このIDを非表示/違反報告)
夢鸞 - 号泣です。素晴らしいお話、ありがとうございました。 (2020年11月29日 12時) (レス) id: 640116ca2f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ハナ | 作成日時:2019年9月30日 13時

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