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そして、9月1日がやってきた。
今日から私は施設に入る。
午前9時…今頃始業式かなぁ。
駐車場に向かうため家を出ると、向こうから誰かが走ってくるのが見えた。
それは、見覚えのあるシルエットで。
あれは…
中也と太宰……?
そう思っていると、二人はあっという間に私の元まで辿り着き、両膝に手を当て苦しそうに肩で息をする。
どうして来たの?始業式は?
真逆抜け出してきたの?
久々に見た中也は、少し痩せてしまっていた。
夏休みずっと入院してたの?
体調そんなに悪かったの?
せっかく退院したのに走っちゃだめだよ。
「A……どこ、行くんだよ…」
「転校って、何のことだい…?」
二人はまだ整わない呼吸の中、口を開く。
あぁ、クニッキーから聞いたのか。
「何でだよ……。何故手前は俺の前からいなくなろうとする…?何故いつも一人で勝手に何処かへ行こうとするんだよ…!」
「………」
「保健室で話した時から、俺はAと離れた方がいいと思っていた。だが、Aが俺を必要とするなら、その時だけでも側にいてやりたかった」
その言葉で思い出す。
中也が私ではなく、としちゃんの名前を呼んだときのことを。
あれは、私のことを嫌いになったからじゃなくて、中也の優しさだったんだ。
「俺のこと嫌いでもいい…。だから、頼むから、俺の前から居なくなんなよ……」
中也の声がどんどん弱くなっていき、その代わりに今度は太宰が声を出した。
「僕は、中也とは違って心広い人間じゃない。優しくもない。だから、Aちゃんから散々言われて正直腹が立ったよ。でもね、それでも頭の中でAちゃんのことを考えてしまうのだよ」
太宰…中也……。
そうか。
私はまだ、嫌われてなかったんだね。
「私は2人が見つけられない場所へ行くよ」
2人の瞳を見据え精一杯笑いそう告げる。
もういいよ。
最後くらい笑っていてよ。
笑ってお別れしよう?
「私を探さないでね」
戻りたいのに戻れない。
好きだと伝えたいのに伝えられない。
もうあの頃には戻れないの。
だからせめて、笑っていて。
2人の笑顔をしっかり見せて。
忘れそうになってもまたちゃんと思い出せるように。
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文字数限界だお。お。
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暁月臨(プロフ) - 涙腺ガバガバでヤバいです!更新待ってます!!! (7月18日 18時) (レス) @page5 id: 59dc159e7e (このIDを非表示/違反報告)
蓮蜜 - 更新頑張って下さい! (2021年10月30日 11時) (レス) id: a6fc2eacdc (このIDを非表示/違反報告)
蓮蜜 - 読みながら泣いちゃいました…夢主ちゃんには幸せになって欲しいです! (2021年10月30日 11時) (レス) @page5 id: a6fc2eacdc (このIDを非表示/違反報告)
teo_taniyama122(プロフ) - sot3y1z1kさん» 返信遅れてすみませんでしたっ。。ありがとうございます!最高に嬉しいです (2020年12月20日 10時) (レス) id: fa78e927e4 (このIDを非表示/違反報告)
sot3y1z1k(プロフ) - 凄い感動しました!見ながら自然に泣いててもう本当に貴方、天才ですか?これからも、頑張ってください!応援してます! (2020年7月12日 12時) (レス) id: 9417010afe (このIDを非表示/違反報告)
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