追（1） ページ32
ぼんやりとした、白い海に揺蕩う感覚。
目覚めたばかりの私には此処が何処だか分かったものじゃない。
足はある。手もある。首も、胸も、胴も。
瞬きをしたその一瞬。
白が黒に代わり、明滅を繰り返す。
次第に黒が私の視界を埋め尽くし、盲目になったかのような錯覚を覚える。
こんな暗さに、何故か懐かしい畏怖を感じた。
もう一度瞬きをすると、今度は見覚えのある鳥居が目の前にあった。
？「捕まえてごらーん！」
白と赤の巫女装束を来た銀髪の少女が目の前を駆けていく。
その少女を、私は知っている。
それなのに、赤の他人に思えてならない。
？「こら！待ちなさーい！」
少女を追う女性は、口調こそ怒っているものの、何処か楽しそうに笑っている。
？「また追いかけっこか…2人共、転ばないでおくれよ？」
女性と少女とは違い、漆黒の髪を持った男性が呆れたように声を掛ける。
不意に、胸が暖かくなった。
次に瞬きをすると、また黒。そして、鳥居に戻る。
境内を掃く少女は先より成長しているようだった。
それ以外の変化。
妖が7体、少女の近くに居る。
少女「ううー、暑い…。」
青い妖「──は暑がりだなぁ…ほら。」
少女「ひんやりだー。ありがとー！」
桃色の妖「──！掃除終わったら麦茶と饅頭で休憩しよっか！」
少女「はーい！」
男性「君達が此処に来てくれてからこの子も大人しくなったなぁ…」
女性「そうね。このまま貴方達があの子を嫁に貰ってくれれば良いのだけれど。」
赤い妖「俺達が──を娶るんならもっと強くなんなきゃっすね。」
女性「これ以上強くなるなんて…。頼もしいわ。」
男性「私達に、もしもの事があれば…その時は、あの子を宜しく頼む。」
赤い妖「…何辛気臭い事言ってんすか！」
諦めと、覚悟の表情。
手を伸ばしたかった。
声を掛けたかった。
駆け寄りたかった。
許されない事だ。
10人の幸せそうな過去を壊すような事を私がしてはいけないのだ。
明滅。そして、夜闇。
怒号。銃声。
「殺せ！異形の巫女達を殺せ！」
それでも足は動かないし、声は出ない。
悲しい過去にも干渉出来ないなんて、そんなの…
ふと、視界の端に7人の妖と少女が走って行くのが見えた。
あれだけ動かせなかった足は、妖達が走って行った方向に動く。
男性「私が食い止めよう！妻よ、──と生きてくれ。」
女性「そんなの…！」
やっぱり夫婦だったか、とそれを尻目に足はうごき続ける。
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かれん - 凄く楽しく読めました！ (2018年10月27日 18時) (
レス) id: 9f2d1964ce (このIDを非表示/違反報告)
伊達。(プロフ) - OSO さん» 最後までご閲覧頂きありがとうございました！他の作品の更新にも努めて参りますので、これからもどうかよろしくお願いします。 (2018年9月25日 16時) (レス) id: fe0d9e5760 (このIDを非表示/違反報告)
OSO - 完結おめでとうございます！人外化系は私も好きです！他の作品も頑張ってください！ (2018年9月25日 7時) (レス) id: 04bdd4e69b (このIDを非表示/違反報告)
透(プロフ) - 伊達。さん» ありがとうございますm(_ _)m (2018年9月19日 14時) (レス) id: 5925c39507 (このIDを非表示/違反報告)
伊達。(プロフ) - 透さん» ちん、と読みます。話中の全てにルビを振らせて頂きます。 (2018年9月18日 22時) (レス) id: fe0d9e5760 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：伊達。 | 作成日時：2018年8月23日 13時
