検索窓
今日:5 hit、昨日:1 hit、合計:14,858 hit

ページ8

「まだ時間があったらうちで涼んでいきませんか?彼、まだ時間がかかるでしょう。こんなところで待っていては熱中症になってしまいますよ」

「お、まじで?んじゃお言葉に甘えて〜」


──



「ん?陽介じゃないか」

「おっ、なんで奈良坂いんの?あ!もしかしてきさらちゃんの彼氏?」

「違います。あと私は如月だと何回も……」


そうだ、この人は何度言っても聞かない人だった。

Aは諦めて小さなため息をついた。

氷の入った透明なグラスに、水滴の付いた青い蓋のピッチャーで麦茶を注ぐ。2人の前に麦茶を並べて、奈良坂と米屋が並んで座る2人の向かい側に腰を下ろした。

そしてまた、Aは黄色い糸を見た。


(米屋さんと奈良坂にも……)


麦茶の注がれたグラスを持つ、米屋の手の小指と、机の上に置かれた奈良坂の手の小指に結ばれた黄色い細い糸。


「米屋さんと奈良坂は一体どんな関係で……」

「ん?俺たち恋人♡」

「違う阿呆。俺たちはボーダーで同じチームなんだ」


戯言を言う米屋を叩いてAにそういった奈良坂。「へぇ、ぼーだー……」と、ぽつりと呟いて麦茶を飲む。


「奈良坂は、米屋さんはお互いどう思っていますか?」


なんの突拍子もない発言に、2人は顔を見合わせる。奈良坂は「そうだな」と言って、カランとなる氷を眺めながら真剣に考え始めた。


「…陽介は馬鹿だが良い奴だ。常に前向きなところは尊敬できるな」

「へぇ、奈良坂って俺の事そう思ってたのか。オレはなぁ……。うーん、オレも奈良坂のことは結構尊敬してる。頭良いしスナイパーとしての腕もいいし」

「そん、けい……」


俯いて何かを考えるA。

黄色い糸はお互いを尊敬している証なのだろうか。あぁでも、私は三輪さんとまともに会話をしたことがない…。
聞いてみたはいいものの、自分と彼に共通点なんて微塵もない。一体この黄色い糸は何を意味するのだろう。

ぐるぐると思考をめぐらせていれば、ぴりりりりり、とどこからが着信音がした。米屋はポケットからスマホを取りだし、その場で応答する。会話を聞く限り三輪さんだろうか、などと思いながらカゴに盛られたお菓子を摘んだ。


「オレちょっと迎えいってくる!」


そう言って忙しそうに出ていった米屋を見送った2人。同じクラスで、仲のいい2人だが、そばには必ず誰かがいて、2人きりになるということは無かった。

◇→←◇



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (19 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
11人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:常盤千歳 x他6人 | 作成日時:2020年8月25日 10時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。