4-4.ぶりっ子ちゃんの当惑 ページ5
「それだよ！ それ！」
しばらく呆気に取られていたもりりん先輩が、突然身を乗り出した。
「ふえ？」
「ももえーるだよ！ お二人さん、この間の昼休みに二年生にぶりっ子の意識調査をやってたよね。その時に見ちゃったの。ももえーるを」
確かにあの時、しっかりと目が合った。目撃者で間違いなかった。やはり尾行していた理由はももえーるにあったのだ。
「百恵ちゃん、実はね……あの時、もりりん先輩と泉先輩はアンケートに答えてくれただけじゃなくて、周りに呼びかけて人を集めてくれたの。先輩のおかげで、良いプレゼンのデータが取れたんだよ」
初耳だった。遅ればせながら慌ててお礼を述べると、「いやいや全然全然！ 力になれたらなって思っただけ」ともりりん先輩は頭の双葉をツンツンいじって照れた。泉先輩は依然として表情ひとつ変えないでいたが。
「私たち、ももえーるに衝撃を受けたの！ あんなに一生懸命誰かを応援するぶりっ子なんて見たことなかった。それから気になって、お二人さんの様子を陰でずっと窺ってたの。放課後のプレゼンの練習も、こっそり見てた。ぶりっ子を研究するお二人さんは、いつも真剣そのもので――やっぱり、この子たちしかいないって、確信したの」
もりりん先輩が泉先輩に目配せしてから、二人は席を立った。ひとりだけ座っているのが気になったのか、隣の蘭ちゃんも腰を上げた。
「朝戸衣百恵ちゃん、塒蘭ちゃん」
わたしたちを交互に認めるもりりん先輩。太眉がキリっと逆八の字を描いている。
泉先輩は無言で背中を向けてすたすた歩き、段差を登って黒板の前に出た。わたしと蘭ちゃんの眼前にある上下スライド式の黒板は、今は二枚とも下部で重なった状態にある。外側の黒板は見るだけで頭痛がしそうな化学方程式がつらつら並んでいるが、内側の方は隠れて見えない。
ガラガラガラ、と泉先輩は外側の黒板を押し上げる。
上の行き止まりで黒板が少し跳ね返るのと、現れた内側に書かれている字を理解したのはほぼ同時だった。
『娯楽同好会』
「娯楽同好会に、入りませんかっ！？」
時が止まった。わたしと、蘭ちゃんだけ。急な話を真正面からお見舞いされると、こうも頭は考えることを放棄してしまうものなのか。
「みんなを楽しませる、エンターテイナーになりませんかっ！？」
急な話の追撃。皆目見当がつかぬまま、下校時刻のチャイムが横入りする。
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やま(プロフ) - 更新待ってます!! (2021年9月19日 18時) (
レス) id: 0eb68c7075 (このIDを非表示/違反報告)
柚子 - もえたん可愛いですね！私自身、ぶりっ子の事が嫌いまでとはいかないけど少し苦手意識があったんですが、この作品を読んでぶりっ子への意識が変わりました！ありがとうございます！これからも更新頑張って下さい！！ (2021年8月24日 1時) (レス) id: 12dcb448c9 (このIDを非表示/違反報告)
夜瑠 - 面白くて、『一周回ってぶりっ子を許せる小説』から一気見しちゃいました！！皆大好きです！！次の更新楽しみにしてます！！ (2021年7月19日 19時) (レス) id: ef33b3228d (このIDを非表示/違反報告)
桜夜桜もち - こんな一生懸命で可愛いぶりっ子なんて許す以外に方法あります…?! (2021年7月17日 15時) (レス) id: 54667db88c (このIDを非表示/違反報告)
豆の字(プロフ) - リカさんさん» ありがとうございます！！お楽しみいただけてとっても嬉しいです！これからもぶりっ子の可能性を発掘していきます！偏見や先入観だけで片付けるには、あまりにももったいない逸材なので……！ (2021年7月16日 18時) (レス) id: dee9e908a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：豆の字 | 作成日時：2020年3月30日 18時
