炎の呪いを解くのはあなた ページ14
俺は過去を覚えていなかった。
恐らくいただろう父のことも母のことも、兄弟がいたのかも。思い出というものは何一つ持っちゃいなかった。だから、他のやつらが語る家族のことだとか、昔の友人との笑い話だとか、そんなものがまるで現実味のない作り話のようにしか思えなくて。学生の頃、俺はどうしても周りのやつらと馴染めなかった。距離を置いてしまった。
他のやつらが当たり前に持っているものを俺は持っていない、俺の中はすかすかだ。目の前の席に座っていた同じクラスのやつが、授業が終わると同時に立ち上がり、近くに座っていた友人らしいやつと合流し楽しそうに話しながら教室を出て行く。
俺はその光景を、何もしなくても流れ続ける映画のようにただ黙って眺めていた。
何も覚えちゃいなかった。しかしそれでも日常生活には支障はなかった。過去を覚えていなくたって箸の持ち方だとか日本語の喋り方だとかは覚えているのだ。当たり前のことを覚えている俺は、それだけならば一見は他のやつらと何も変わらないただの学生だった。
けれど違う。過去のことで、俺には日常生活に支障をきたすものが確かにあった。それは毎朝の習慣であったり、街中のガラスをふと見た瞬間だったり、そもそも誰かと顔を合わせた時だとかに実感する。
俺の顔面の左側には大きな火傷があった。痛々しい変色した肌。目を覆っているそれは、しかし視力には全く関係なく他のやつらと同じように機能する。時折疼くことがあれど、そこまで大きな問題は俺にはなかった。
けれど俺を見る人々にはあったようで。
俺の顔を見た人々はまず例外なく俺の火傷をぎょっとしたような表情で見て、その後同情するように顔を歪ませるのだ。何があったのか、なんて聞かなくても大体のことは察することができるから。けれど何も覚えていない俺にとって、それはとても鬱陶しく、悲しいものだった。初対面で俺は普通ではないと認定される。俺が何も言わなくても勝手に憐れまれる。まだ、気持ち悪いというような視線で見られる方がマシだった。稀に向けられるそれは確かに腹が立つし嫌なものではあったが、それでもまだ一瞬で逸らされる分楽だった。
記憶のない俺は、それでも普通に生きられたはずなのに、その覚えていない記憶のせいで普通に生きることすら難しいことになってしまっていた。
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●龍●(プロフ) - そのためならいくら責め立てられようと構わない。そういう考えなのです…。文字制限で削ってしまった部分でもあったので、怜皇様が察してくださってとても嬉しいです…！！ (2018年8月14日 11時) (
レス) id: 5b64b63f06 (このIDを非表示/違反報告)
●龍●(プロフ) - 怜皇さん» わーまたまたコメントありがとうございます！！ そうなんです、相楽の嘘は将来気づかれ責められたり憎まれてりしてしまうもので、けれどそれを覚悟の上で嘘を吐いたのです。今女子生徒が絶望に落ちるよりも、笑顔でいる方がいい。 (2018年8月14日 11時) (レス) id: 5b64b63f06 (このIDを非表示/違反報告)
怜皇(プロフ) - わっわっそんな相楽さん(´；ω；`)相楽さんが女子生徒の笑顔を守るために嘘をつくところ、すごく心痛みました…卒業して外に出るようになった生徒に攻められ恨まれる可能性だってあるのに…相楽さん(´；ω；`) (2018年8月13日 21時) (レス) id: 0ed6205140 (このIDを非表示/違反報告)
●龍●(プロフ) - 怜皇さん» 怜皇様はどう思われるだろうか…と不安でした。なのでこうしてわざわざ来てくださり感想を伝えてくださった怜皇様の心遣いがとても嬉しいです！！リズィーさんと相楽と、そして怜皇様と作り上げた素敵な関係が表現できていたなら良かったです…！ (2018年8月11日 22時) (レス) id: 5b64b63f06 (このIDを非表示/違反報告)
●龍●(プロフ) - 怜皇さん» わわわ怜皇様じゃないですか…！！こんばんは、早速見てくださりありがとうございます…！！こんなにもたくさんお褒めいただき、光栄であると共に本当に心から嬉しいです！今回は前話より更にリズィーさんを大胆に動かしてしまったような気がしたので、 (2018年8月11日 22時) (レス) id: 5b64b63f06 (このIDを非表示/違反報告)
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