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ずっとぼうっとしてしまっていたので、天文台の塔のほうが何やら騒がしいことに、ユリは途中まで気がつかなかった。
ハリーを呼びに帰った後、少し一人になりたくて、外出禁止の校庭に一人座り込んでいたのだ。
去年、スネイプが隣にいてくれたブナの木陰。
ここは、城のどこからも死角になるが、城への見晴らしはいい場所だった。
なので、ここからは城で一番高い天文台の塔もよく見える。
そのうえに、蛇の舌を出した緑色の髑髏が、ギラギラ輝いていた。
ユリはそれが何か知らなかったが、どうやら良くないことが起きているらしいとは察することができた。
ダンブルドアは遠出すると言っていた。
この学校は、無事だろうか?
ユリは緊張に息を吐いて城に駆け戻ろうとした途端、塔の上で見覚えのある緑色が閃いたのが、視界の端に映った。
思わず留まって、上を見上げる。
何か大きなものが、塔の上から落ちてくるようだった。
高い塔の上から落ちてくるそれが人だとユリが気づくのには、落下の時間はかなりぎりぎりだった。
「アレスト・モメンタム!」
咄嗟に杖を出して呪文を唱えると、間一髪でその身体は地面に叩きつけられずに済んだ。
途端、俄かに城が騒がしくなった。
戦闘でも起きているかのようなざわめきだ。
ユリは、落ちてきた身体のもとに駆け寄った。
かなりの距離があって、しかしそこに辿り着く前に、それが誰であるか、ユリにはわかった。
「先生?ダンブルドア先生?」
ダンブルドアは目を閉じていた。
仰向けに横たわって、眠っているようだった。
けれど、ユリは、異変に気付いた。
「先生、せん、せい」
震える手でその肌色の手に触れるが、まるで温度が感じられない。
冷たいわけではなかった。
ただ、重く、まるで死んでいるかのように……。
突然、校庭のほうから怒号が聞こえて、ユリは振り返った。
声の正体は、ハリーだ。
ユリは幾度となく彼の怒鳴り声を聞いたことがあるので、すぐにわかる。
彼は誰に対して、と考える間もなく、雲の切れ目から突然現れた三日月に照らされ、二つの輪郭が校門のほうへ疾走していくのが見えた。
ユリは目を見開く。
プラチナブロンドと真っ黒の二人は、ユリには間違えようもなかった。
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岡P(プロフ) - お話とても面白かったです。この先どうなるのか更新楽しみにしています。 (10月31日 22時) (レス) @page44 id: e3d27a2b53 (このIDを非表示/違反報告)
つき(プロフ) - すごく面白くて最高です!応援しています! (9月28日 1時) (レス) @page43 id: cb75ec721c (このIDを非表示/違反報告)
アミ - この小説を1話読む度に、主人公が感じるドキドキ、喜び、切なさ、愛おしさ、全てが臨場感をもって伝わってきて、満ち足りた気持ちになります。あなたの小説に出会えてよかった、そう思える作品でした。続きを読むのをとてもとても楽しみにしています。ご自愛ください。 (8月30日 19時) (レス) id: 2340b31398 (このIDを非表示/違反報告)
エヌエヌ - 最高です!!!!とても面白く、素晴らしい作品だと思いました。ダンブルドアが亡くなったのは6月で、夢主ちゃんのお父さんとの別れは8月前ということはもうそろそろ……??と思いどうなるのか気になってます。続き楽しみに待ってます〜!!! (7月26日 16時) (レス) id: cc01457125 (このIDを非表示/違反報告)
咲夜(プロフ) - 今まで読んだ作品の中で1番好きです。更新楽しみにしてます。素敵な出会いをありがとう。 (7月25日 2時) (レス) @page43 id: c7131ab9ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みや。 | 作成日時:2023年4月5日 4時