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「とうさん、これ……」
「どうした?」
「とうさんに貰ったショール。事故で焼けちゃった。ごめんね」
「貸してごらん」
ユリは、クリスマス休暇でロンドンにある家に帰ってきていた。
そして、グレーのマフラーを外す前に、カバンからベージュのショールを引っ張り出す。
眉を下げてそれを差し出したユリの頭をひと撫ですると、彼女を上に行かせてから、ヨーゼフは眼鏡をかけて慎重にショールを開いた。
奇妙な形に焼け焦げている。
茨の這ったような……いや、単なる装飾品の型がうつったものかもしれない。
どちらにしても、嫌な呪いの気配を感じる。
自分の思っていたより、娘の近くに危険が迫っていることを察したヨーゼフは、しかし無力に天を仰いだ。
1000歳を超えるヴァンパイアである彼は、昔マーリンという魔法使いとちょっといろいろあって、魔法界に深くは干渉できないのである。
まだ未成年のユリを呪いや悪意から守ることくらいはできるけれど、元凶を断つことはできない。
あのとき立てた誓いがなければ、あんなイキった小僧の一人や二人、捻りつぶしてやるのに。
それに、ユリが成人する前に……今年の八月より前には、あの子を手放さなければならないだろう。
そう確認するように思うことが増えた最近、長年を生きていてなお感じたことのなかった感傷に陥ることがよくある。
けれど、どうしようもない。
誓いを破ればどんな目に遭うか、ヨーゼフは身をもって知っている。
それが、あの子にまで累が及んでしまったら。
思ったより、愛してしまった。
やさしく、賢く、かわいい、自慢の子どもだった。
「ユリ、今夜は外に食べに行くかい」
「うん」
「何が食べたい?」
「おにく」
残されたわずかな時間を、大切に、愛に満ちたものにしようと思う。
一番大切なときに、傍で守ってやることができないから。
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岡P(プロフ) - お話とても面白かったです。この先どうなるのか更新楽しみにしています。 (10月31日 22時) (レス) @page44 id: e3d27a2b53 (このIDを非表示/違反報告)
つき(プロフ) - すごく面白くて最高です!応援しています! (9月28日 1時) (レス) @page43 id: cb75ec721c (このIDを非表示/違反報告)
アミ - この小説を1話読む度に、主人公が感じるドキドキ、喜び、切なさ、愛おしさ、全てが臨場感をもって伝わってきて、満ち足りた気持ちになります。あなたの小説に出会えてよかった、そう思える作品でした。続きを読むのをとてもとても楽しみにしています。ご自愛ください。 (8月30日 19時) (レス) id: 2340b31398 (このIDを非表示/違反報告)
エヌエヌ - 最高です!!!!とても面白く、素晴らしい作品だと思いました。ダンブルドアが亡くなったのは6月で、夢主ちゃんのお父さんとの別れは8月前ということはもうそろそろ……??と思いどうなるのか気になってます。続き楽しみに待ってます〜!!! (7月26日 16時) (レス) id: cc01457125 (このIDを非表示/違反報告)
咲夜(プロフ) - 今まで読んだ作品の中で1番好きです。更新楽しみにしてます。素敵な出会いをありがとう。 (7月25日 2時) (レス) @page43 id: c7131ab9ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みや。 | 作成日時:2023年4月5日 4時