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「祖父と……祖母が、殺されたというのは、本当ですか」
どこか遠くを見ていた瞳の焦点が合っていくのがわかった。
ダンブルドアは少しゆっくり時間をかけて、やっとユリに目を合わせる。
「どこでそれを……ああ、フィレンツェに聞いたのじゃな」
「はい、先生、あの……」
「無論、その質問には答える義務があろう。そして、君には知る権利がある」
ユリは面食らった。
たしかに一番知りたいことではあったけれど、断られても仕方ない質問だと思っていた。
この目の前の老人は、秘密主義なところがあるから。
「そもそも、君に、君のルーツについて伝える計画はしておったのじゃ。今日は、それを少し早めて第一回とするかの」
「そんなに……その、長い時間が必要なんですか?」
「そうとも。君の家系は、それぞれが少々特殊な人生を歩んでおるからして」
「人生?」
「これを使う」
ユリはダンブルドアの黒い手が指さす方を見た。
浅い石の水盆が置かれていた。
縁にぐるりと不思議な彫り物が施してある。
そしてその中で、明るい白っぽい銀色の物質が、絶え間なく動いていた。
「ペンシーブ、『憂いの篩』じゃ」
怪訝なユリの視線を受け止めて、ダンブルドアが答える。
「時々、感じるのじゃが、この気持は君にもわかると思うがの、考えることや想い出があまりにもいろいろあって、頭の中がいっぱいになってしまったような気がするのじゃ」
その言葉にユリは数回目を瞬いて、曖昧に笑った。
正直言って、そんな気持になったことがあるとは言えなかった。
「そんなときにはの」
ダンブルドアが石の水盆を指差した。
「この篩を使うのじゃ。溢れた想いを、頭の中からこの中に注ぎ込んで、時間のあるときにゆっくり吟味するのじゃよ」
ダンブルドアは部屋の隅の黒い戸棚に杖を向け、クリスタルの瓶をふたつ、取り出した。
それはメリーゴーランドのようにくるくる回りながら二人の間を漂いはじめる。
「ユリ、どちらから知りたい?」
「え……?」
「こちらがお祖父さんのはじまりの記憶。こちらが、お祖母さんのはじまりの記憶じゃ」
ユリはわけが分からなかったけれど、なんとか質問を絞り出した。
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岡P(プロフ) - お話とても面白かったです。この先どうなるのか更新楽しみにしています。 (10月31日 22時) (レス) @page44 id: e3d27a2b53 (このIDを非表示/違反報告)
つき(プロフ) - すごく面白くて最高です!応援しています! (9月28日 1時) (レス) @page43 id: cb75ec721c (このIDを非表示/違反報告)
アミ - この小説を1話読む度に、主人公が感じるドキドキ、喜び、切なさ、愛おしさ、全てが臨場感をもって伝わってきて、満ち足りた気持ちになります。あなたの小説に出会えてよかった、そう思える作品でした。続きを読むのをとてもとても楽しみにしています。ご自愛ください。 (8月30日 19時) (レス) id: 2340b31398 (このIDを非表示/違反報告)
エヌエヌ - 最高です!!!!とても面白く、素晴らしい作品だと思いました。ダンブルドアが亡くなったのは6月で、夢主ちゃんのお父さんとの別れは8月前ということはもうそろそろ……??と思いどうなるのか気になってます。続き楽しみに待ってます〜!!! (7月26日 16時) (レス) id: cc01457125 (このIDを非表示/違反報告)
咲夜(プロフ) - 今まで読んだ作品の中で1番好きです。更新楽しみにしてます。素敵な出会いをありがとう。 (7月25日 2時) (レス) @page43 id: c7131ab9ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みや。 | 作成日時:2023年4月5日 4時