事実 ページ10
すべて話し終えたその頃には、官兵衛も難しい表情をしていた。
『……と、いうことだ。何か知っていることはないか?』
「小生も初耳だぞ…。なるほど……虫、ねぇ。」
官兵衛は考えこむ素振りをし、ううむと唸った。
「自然のもんじゃないとすると、問題は誰がやったのか、だよなぁ。」
『それが分かれば苦労しないのだがな……。そして、何より厄介なのが……』
「誰が虫に取り付かれているのか分からないところ、だしね。」
『そういうことだ。私達が仲間だと思っているやつも可能性はあるし、私自身も、あるいは…』
「A様!A様が弱気でどうするし!」
『ははっ!冗談だよ亜噂。本気で怒るなよ〜』
「……っ…A様の阿呆!!もう知らないし!」
官兵衛の脳裏に、一人の男がよぎる。
いつもふらふらとして、こちらの心配なんて知らん顔で、阿呆と罵っては去っていく男だ。
"いつでも戻って来て良いからな"
そう言っても、目にするのは、猫のように丸まった背中だけだ。
今は、何処で何をしているのだろうか。
そう思う官兵衛を、Aは寂しそうに眺めていた。
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「ガハッ……ゴホッゲホッ……」
「だから無理するなって言ったのに……これじゃ悪化するばかりだよ……」
額に汗を浮かべ、苦しそうに口元を押さえるその姿は、以前の猛々しさを忘れさせていた。
佐助にさすられた背中は、弱々しく震えている。
「はァ…ッ………案ずるな、佐助よ。お主が戻るまでは……くたばりはせぬ……」
「そんなこと……できるわけないでしょ?!今もこんな状況なのに!立っているのも、やっとなのに………」
「……佐助よ……甲斐の虎を、ナメてくれては困るぞ……儂は、幸村に…まだ教えないと、いけないこと、が」
「ッ…もういいから……分かった。分かりましたから……」
「………万が一、…儂が倒れた、その時は……軍神を頼るのじゃ。あやつなら手を貸してくれよう…ッゴホッゲホッ…」
佐助は、ここにはいない幸村を思いながら、今はすっかりうずくまってしまった虎を
ただ、なだめるように手をおいていた。
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かえこ(プロフ) - らんさん» ありがとう御座います!! (2020年11月18日 20時) (レス) id: aec05404df (このIDを非表示/違反報告)
らん(プロフ) - おもしろかったです! (2020年11月18日 6時) (レス) id: 632a5f4028 (このIDを非表示/違反報告)
らん(プロフ) - かえこさん» ばっちりとしかいえねぇ (2020年11月3日 14時) (レス) id: 632a5f4028 (このIDを非表示/違反報告)
かえこ(プロフ) - らんさん» 口調とか大丈夫でしたか?もう、ほぼ勘で書いてます……( TДT)ゴメンヨー (2020年11月3日 12時) (レス) id: aec05404df (このIDを非表示/違反報告)
らん(プロフ) - あれだげしかなかった情報で書けるってすごいですね! (2020年11月3日 8時) (レス) id: 632a5f4028 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かえこ | 作者ホームページ:ホームページ?ナニソレオイシイノ?
作成日時:2020年8月16日 19時