新天地? ページ50
バサバサと羽ばたく音は、もう何度聞いただろうか。
ヒュウヒュウとなびく風は、何度浴びただろうか。
いつもと同じような光景だったが、一つだけ違うところがあった。
『……』
転々と、Aの手を伝う雫。
空の涙、と言えば聞こえは良いが、所謂それは雨である。
いよいよ土佐、という日に限って生憎の雨天。
Aのテンションも下がっていた。
『……何故今日に限って…』
隣を飛ぶ亜噂は、笠を被り直してため息混じりに言う。
「こればっかりは、どうしようもならないですしねぇ…。寧ろ、今までがうまく行きすぎたんだし。」
『ぐぬぅ……道祖神はどこまで私たちを嫌えば気が済むのだ……!!』
悔しげに言うAを横目に、亜噂は、自らが捕まる鳥…琴を見る。
琴は雫を飛ばしながら飛んでいる。が、やはり羽が水を吸って重たいのだろう、いつもより動きが鈍い。
(これは…休憩を多めにした方が良さそうだし。)
その考えが琴に伝わったのか、琴は甲高く鳴き声をあげ、高度を上げた。
自分達は鍛えてるから大丈夫だ、とでも言っているのだろうか。
それとも、休みを多くするなど、プライドが許さないのだろうか。
いずれにしろ、やる気になっている琴を見、亜噂は少しばかり微笑んだ。
Aは、未だつまらなそうに掴まっている。
-----
あれから数刻が経過した。
朝早くから飛び続け、結局一度も休憩を挟まずに、そこへ来てしまった。
そこは、瀬戸内海の荒波を受ける町、土佐。
今も船が浮かび続け、その強さを誇っている。
だが、Aは違和感を覚えた。
『なあ亜噂。ここは本当に土佐か?』
「え?地図道理進んでいればそうのはずだし」
『ううむ…なんだか鈴と琴が、まっすぐ飛んでないような気がしてな。』
「ぇ……」
こういうときのAの勘はよく当たる。亜噂は冷や汗を背中にかいた。
「でも…瀬戸内海は見えてるし。」
『そうだが…。ここに来るまで、どうにも曲がっていたような気がしたんだ。』
「そんなこと分からないし。確かに、太陽がないからそう思うかもしれないしけど」
ガシャン………
不意に鈍い音が背後から聞こえる。
Aが振り返ると、黒煙を上げる忠勝。
『ッ忠か』
忠勝はふらついていき、とうとう重力に逆らえなくなった。
重たいその身体が、風を切って落ちて行く。
『っ!!ただかーーーつ!!』
落ちて行く軌道を、二人が追った。
19人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かえこ(プロフ) - らんさん» ありがとう御座います!! (2020年11月18日 20時) (レス) id: aec05404df (このIDを非表示/違反報告)
らん(プロフ) - おもしろかったです! (2020年11月18日 6時) (レス) id: 632a5f4028 (このIDを非表示/違反報告)
らん(プロフ) - かえこさん» ばっちりとしかいえねぇ (2020年11月3日 14時) (レス) id: 632a5f4028 (このIDを非表示/違反報告)
かえこ(プロフ) - らんさん» 口調とか大丈夫でしたか?もう、ほぼ勘で書いてます……( TДT)ゴメンヨー (2020年11月3日 12時) (レス) id: aec05404df (このIDを非表示/違反報告)
らん(プロフ) - あれだげしかなかった情報で書けるってすごいですね! (2020年11月3日 8時) (レス) id: 632a5f4028 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:かえこ | 作者ホームページ:ホームページ?ナニソレオイシイノ?
作成日時:2020年8月16日 19時