黒煙 ページ13
『佐助!無事か?!』
「A……!」
Aは二人の傍へ駆け寄ると、銀を取り出した。
『私が信玄公を連れ出す。佐助は先に行ってくれ。』
「あんたの力じゃお館様は無理だ!」
『"私"ならな。"もう一人の私"ならできる。』
意思を固めたAと顔を見合わせ、佐助は少し考える。
時間がないと考えたのか、すぐに頷いた。
「っ………分かった。頼んだよ……!!」
佐助は音も無く消え、そこには黒煙だけが残った。
Aは蒼白な信玄の顔を見下ろし、意識を研ぎ澄ませ、
『BASARA技……』
と呟いた。
---
___やれやれ、結局私か。
突然聞こえた声に、Aは目を見開く。
そこは依然として炎が燃え盛り、熱気が肌を焦がしていた。
本当なら、ここで意識が無くなるはずなのに。
『"私"……?!』
___誤算だったかのような顔をするな。そりゃ、私とて早く代わりたいさ。
その声はまるで幻聴かのように脳内に響いた。
苛立ったように床を殴る。
『何故だ……何故代わらない?!』
___どうも、それを望まれてないらしいからな。
その声が消えると同時に、手に温もりが感じられた。
いや、温もりと言える程の温かさではない。ほとんど死人のような冷たさをしていた。
それでも温もりと言えるのは、その手に込められた力のためだろうか。
『っ!!』
「……自らの家臣を……悲しませては、ならぬ…」
消えかけたような声が絞りだされる。周囲を舞う黒煙が、その喉を毒したためだ。
「お主ともあろう、者が…それを忘れたわけ…では、あるまいな……?」
『……ッ…気がついたのか…信玄公』
「こんなもので……気を失うとは……我ながら、情けない……な……」
自嘲するように笑う信玄。
Aは、その笑みが死を呼んでいることが分かった。
『信玄公……もう、喋らないでくれ…!!』
Aは意識を集中させ、奥底の自分を引きだそうと試みていた。
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かえこ(プロフ) - らんさん» ありがとう御座います!! (2020年11月18日 20時) (レス) id: aec05404df (このIDを非表示/違反報告)
らん(プロフ) - おもしろかったです! (2020年11月18日 6時) (レス) id: 632a5f4028 (このIDを非表示/違反報告)
らん(プロフ) - かえこさん» ばっちりとしかいえねぇ (2020年11月3日 14時) (レス) id: 632a5f4028 (このIDを非表示/違反報告)
かえこ(プロフ) - らんさん» 口調とか大丈夫でしたか?もう、ほぼ勘で書いてます……( TДT)ゴメンヨー (2020年11月3日 12時) (レス) id: aec05404df (このIDを非表示/違反報告)
らん(プロフ) - あれだげしかなかった情報で書けるってすごいですね! (2020年11月3日 8時) (レス) id: 632a5f4028 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かえこ | 作者ホームページ:ホームページ?ナニソレオイシイノ?
作成日時:2020年8月16日 19時