女好き男と男好き女〔森山由孝〕

2 ページ4

父がシャワーに入るのを音で確認してから、昔の母のように手際よく料理していき、
4食分の朝食をつくってその2食分だけをテーブルに置く。

風春「もう出来たのか。」
瞳「貴方がシャワーに入るのが遅いからでしょう？」
風春「何だ冷たいなぁ・・・。」
瞳「はいはい。さっさと食べましょう？風春さん。」

リビングの入り口で立ち止まっている父のために椅子を引いて笑いかける。
それに父もほっとした風に笑って見せた。

こんな些細な事も母親のしてきたことだ。
今は慣れた為に何気なくやるが、最初は出来なくてバレて殴られたのを覚えている。
まぁ、そんなことはもう滅多に起きないから静かな朝を送れているが。

風春「今日は体の方は大丈夫なのか？」
瞳「ええ。今日はとても気分がいいの。」
風春「ならいいんだ。・・・そうだ。今日から1週間ぐらい部屋を開けるからな。
一応何がおきてもいい風にお金は振り込んどくけど、気をつけろよ。」
瞳「ごめんね。」
風春「いいんだ。・・・それにしても伊吹を置いて行くっていうのがな。」
瞳「もう子供じゃないんだから。」

手を口に当ててクスクスと笑ってみせる。それに父は満足げに笑って見せた。
傍から見たら壊れてるとしか言えない様な異様で歪な光景。
でも、これが私達でいう普通でしかなかった。

それからしばらく談笑して、時計が7時を指せば父に声を掛ける。

風春「もうこんな時間か・・・。」
瞳「ほら。早く行かなくちゃ。部下さんが待ってるよ？」
風春「ああ。じゃあ行って来る。土産待っとけよ。」
瞳「ええ。楽しみに待ってるわ。」

父の顔が近づいてきたために、ゆっくりと目を閉じる。
それから唇にかさついた何かが当たれば微笑んで見せた。

父はそんな私を見てから家を出て行く。
それをにこやかに送り出せば小さく溜息を付いた。

？「もう行った？」
瞳「・・・うん。行った。いいよ。もう降りてきても。」

階段から声が聞こえたためにそっちを見れば、
弟と妹が恐々と2階からこっちを見てくるのが見える。

瞳「おいで。ご飯にしよう。里桜、美桜。」
2人｢｢はーい。｣｣

2人がパタパタと駆け下りてくるのを見て、それから3人で食卓へと向かうのだった。

3→←1

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す