贖えど抗えど・ダリア様リクエスト ページ10
──貴様とは、もう、付き合い切れん。
何故、そこまでする。
何故自己を考えぬ。何故
何故、何故、何故──。
:::
「凪」
『ん? どした、敦君』
呼べば、彼女は振り向く。そしてふわりと微笑んで、僕に、近づく。
僕はそれを見つめて、「ごめん」と云った。
「あの、時。君が誘拐されて、それで、僕は、……心がぐちゃぐちゃだったんだ」
俯きながら云う僕を、凪は少し驚いた雰囲気ながらも聞いてくれた。あの激情を今制御できるか否かと云えば、否なのだけれど。それ程あの時の怒りは相当だったのだ。
いや、あの後仮にも惚れた子の前で泣き喚くという醜態を晒した事件のことについては本当に何も云えない。というか記憶から消したい。皆の記憶を弄れないかなと本気で思う。
──心で現実逃避をしても無駄だ。そうは思うものの、喉は乾き、視線は何処かを彷徨う。
『別にいいよぉ。私もあん時、怒鳴り返しちゃったし』
けらけらと無邪気に笑う彼女を見て、自分の悩みがどれ程おこがましいか、どれ程愚の骨頂だったのかを悟る。
「……あー、」と意味も無く声を出して彼女を追い抜いて歩いた。えっ、と間抜けな声が聞こえたかと思うと、タタ、と足音が慌てたように後ろを付いてくる。
『ちょ、待ってよ。早くない敦君』
「凪が遅いだけだろ」
『ウワァ辛辣!』と胸を押さえる凪とできる、極めて通常的で普遍的な会話に頬が緩む。
平穏とは正にこのことなのだろう。平々凡々な風景と、気負うことなくできる会話。あの頃僕が求めた情景が、今此処に在る。
『つーか君らアレだねえ、ホント似てるねえ』
凪はほう、溜め息を吐いた。君ら? と訊き返せば、『やつがれ君』と苦笑交じりに答えられる。やつがれ君とは、慥か、芥川の事だったはずだ。
自然と心に巣食った暗闇が鎌首をもたげるが、それを何とか抑えつけて彼女の言葉の続きを待った。
『彼もアレよ、私が敵組織に捕まった時とかぶっ叩かれたもん』
芥川殺す。
『いやまぁね。心配してくれてるのは判るけどさ、何かもう心にクるよね』
耳が痛い。これで無自覚なのだから本当にタチが悪い。
『独占欲みたいなの強すぎかよ! って思うわ』
「僕もだけど」
『ん、何つった?』
「ああ、もう……! 老人かよ! 聞き取れよ!」
『おぉい敦君どうした!? 唐突な罵倒過ぎて私今かなり心に来たぞ!?』
ifの世界・曇天に笑う様リクエスト→←I you she・ダリア様リクエスト
128人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
もち明太子 - リクエストで原作の文ストの人たちとの絡みを見てみたいです (2022年8月30日 20時) (レス) @page44 id: 5a52c0f3ec (このIDを非表示/違反報告)
三斗(トリップ願望者) - ヴェルレエヌさんって一応生きてますよね。ってこと夢主とヴェルさん(ヴェルレエヌ)の絡みが見てみたい! (2022年6月25日 11時) (レス) @page44 id: 9ad11557a3 (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - リーフさん» コメントありがとう御座います!!やりたいですね(真顔)。凪は基本周りの全員を自分よりすごいと思っているのであんまりキレないですね(笑)。リクエスト書くのは非常に遅くなると思うんですがやらせていただきます……! (2022年1月26日 16時) (レス) id: cabf6df670 (このIDを非表示/違反報告)
リーフ - 本編でもコメントさせていただきましたが…番外編も超面白いです。それで大変恐縮なんですが…凪ちゃんが太宰さんやらにガチギレしたのみたいです。なんか静かに怒る人ほど怖いアレ。リク大変失礼ですがお願いします!!!(土下座) (2022年1月20日 18時) (レス) id: 3fbf61d899 (このIDを非表示/違反報告)
アニヲタ(プロフ) - 本当にありがとうございま!!感謝で!!あと、Twitterのアカ作ったのでフォローさせて頂きまし!!これからも応援してま!!本当に毎回毎回リク受け付けて下さりありがとうございます!!感謝しかないです!! (2021年1月11日 16時) (レス) id: 71f36505fa (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:白夜の世界 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nisui03101/
作成日時:2020年1月30日 17時