よし、番外編へ行こう。と思った今日この頃。【文スト】 参。

スポークンストーカー・曇天に笑う様リクエスト ページ15

『──』



おいおい、嘘だろ。

そんな感情を乗せた乾いた笑いが、一人部屋に響いた。


私の視線の先には、私が映っている写真だ──無論私が撮ったものではない。明らかに盗撮と分かる写真を、わざわざご本人の私に送り付けて。震える指ながらに同封されていた封筒を開けてみれば、まぁ説明するのも嫌になるようなおべんちゃらや私の行動、癖などを事細かに書かれていた。
それは私でさえ自覚してなかったのもあり、引き攣った笑いしか出せない。


いやむしろよく笑えるな私。


とにかく、まぁ、少し放っとけば大丈夫だろう。そんな風に思って、全て塵箱に放った。




：：：



『何っなんだあの人はぁ〜〜……!?』



頭を抱えながらそう独りごちた。あれから約二週間。写真は送られるわ尾行までされるわ精神の摩耗が正直に云おう半端ない。とにかく夜道にめっちゃ着いてくるのマジで止めて欲しい。私ホラークッソ苦手なの知ってるのかな。知られてたらホント気持ち悪いんだけど。

……現在は自分の部屋に一人きりである。そう認識すれば、何故か鼻の奥がツーンとなった。やべ、と思った瞬間には、視界がじわりと滲む。



ああ、クソ、泣くな私。これぐらい何だってんだ。


別に、こんなこと一度も経験しなかった訳じゃない。その時だって、慥かに怖かったけれど。別に泣くほどのことじゃ、ああ、クソ。




「凪。いるか？」




不意に聞こえた声。ハッとして目尻を拭った。

……扉を開けてみれば、そこにいるのはジイドだった。『あぁ、よう』と片手を上げると、眉をひそめた顔で「──どうしたんだ」と訊かれる。充血した目元を軽くこすった。



『……あぁ、まぁ何でもない。それよりお前』

「どうしたのかと、訊いている」



有無を云わせぬその声音に、息を呑んだ。……あぁ、ちくしょう、お前って本当。そんな風に、思う。

苦笑いしながら、『んあ、最近ちょっとストーカーみてえなもんに悩まされてるだけ』と云う。すれば目を見開かれた。



「それは──誰だ。誰に。いつから、」

『だぁいじょうぶだよ。何ともねえさ』



そう軽くあしらいながら、店の進捗状況などを話す。ジイドがどこか上の空のような気がしたが、まぁいつも上の空みたいなもんだよな、と思い直して何も伝えなかった。








────その日から、ストーカーはいなくなった。

その人がどうなったのか、私は、知らない。

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