或る、一夏の記録 肆 ページ24
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空が茜色に染まり、皆の影が段々と長くなって来た。そろそろ帰るぞ、と云った国木田を皮切りに皆は川から上がる。
「いやー、最高だったね!」
爽やかな笑顔で親指を立て夜霧が云った。太宰も爽やかな笑顔で中指を立てた。
(クッソ折角凪ちゃんの水着姿を拝めると思ったのに此奴の所為で何もかも台無しにッ……!)
心の中で歯軋りする。と云うか不機嫌なオーラが駄々洩れしている。
「アンタ結構根性ありそうじゃないか、今度横浜に来たら如何だい?」
「与謝野さん、何かちょっと寒気がするんで止めておきます。それと後ろから憐憫の眼差しが凄い向けられるんですけど何ですか、これ何ですか」
与謝野の異能力を知らない夜霧だが流石に冷や汗を垂らす。横浜に来た処で、彼の特殊体質のおかげで解体される事は恐らく──多分──きっと──無いはずだ。
流石の太宰も憐憫の眼差しを向けていたが、凪は『マジか、此れを機にお前頭の中も直してもらえよ』と云った。
「チッチッチ……云っておくが俺は頭いいんだからな? 東大合格したんだぞ?」
『嘘ォ!?』
「嘘」
『ガチで此処から突き落とすぞクソ野郎』
夜霧を橋の上から突き落とそうとする凪を谷崎と敦のヘタレ軍団が止める。国木田はもう何も突っ込まなかった。
「……あれ、お前ってまだ橋から跳べないんだっけ」
『あ、まぁ』
誰も止められなかった。
夜霧は先ず谷崎と敦を引き剥がす。その反動の所為でバランスが不安定になった凪の荷物をひったくる。凪の両手が手すりに着く。夜霧は肩を掴む。
(嘘だろちょっ待っ──!)
凪が心の中で叫んだ。
「逝ってこぉーーーい!!」
『お前ガチで死ねクソこの変態オタク莫ッ』
ザッ……パァーン!
凪が夜霧を罵倒し終わる前に、水面からの渋きがそれを遮った。
凡ては一瞬だった。
『……ぶはぁ! 死ぬ! ゲホッゲホ、ゴッホ!』
水面で何とか息をする凪を見下ろした夜霧は、凪が暫く上がってこなさそうな事を確認する。
そして、未だ呆然としている皆に──頭を下げた。
「凪の事。宜しくお願いします」
たった一言。
たった一言だった。
余りにも、十分過ぎた一言だった。
「──命に代えても、必ず我が探偵社員が、彼女と共に闘い、彼女を守ります。どうか、ご安心を」
国木田の言葉を聞いた夜霧は、「ありがとう御座います」と僅かに微笑んだ。
「では」
凪が橋に上がって来た時、彼の姿はもう無かった。
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とあるアニメーター - マジですか!!!ありがとうございます!お願いします! (2020年1月21日 21時) (レス) id: 6c92e05c62 (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - とあるアニメーターさん» へえーいいですねえ!やらせて頂きますとも、何かかなり滅茶苦茶な展開になりそうですが……(笑)。 (2020年1月21日 18時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
とあるアニメーター - そうですか!良かったです!リクエストで、そうだ、番外編作っちゃおう!と思った今日この頃の第3段を記念して…。みたいな感じで、今日この頃シリーズで出てきた文ストキャラ達をたくさん出してほしいです!こちらも長めになって良いので、よろしければお願いします! (2020年1月21日 18時) (レス) id: 6c92e05c62 (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - とあるアニメーターさん» ええ勿論!ちょっと遅くなるかもしれませんが番外編もとうとう三!……ひええマジかあ。 (2020年1月21日 17時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
とあるアニメーター - この番外編、続編行きますか? 続編作って頂けたら、またリクエストしたいです。 (2020年1月20日 21時) (レス) id: 6c92e05c62 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白夜の世界 | 作成日時:2019年7月6日 21時