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28話 ページ29

「おやおや太宰君。君の方から来るとは珍しいなあ。紅茶を用意させよう。」



首領は冷たい空気など気にせずに、明るく言った。おそらく俺の考えは正しい。織田作が危ない。
そして首領が俺を此処に呼んだのも俺が勘づいて行動去るのを阻止するための時間稼ぎ。
まだペラペラと喋っている首領の言葉を太宰が遮った。



「私がなんのためにここに来たか、ご存知なのでは?」



首領はただ薄い笑みを張り付かせ、太宰と俺を交互に見ていた。少し間を置き首領は答えた。



「勿論だよ。太宰君。緊急の要件だね?」



「そうです。」



「なんのことか分かってるくせに……」



俺は呟いた。首領は頭がいいのだ。今だって太宰か虚をつかれたかのように黙ってしまったのが根拠の一つ、いくら頭のキレる太宰でも首領と話すのには相当の頭を使うだろう。



太宰と首領は暫くお互いの心理を読み取りながら話していたが、首領が黒い封筒を見せた途端、太宰の顔は蒼白になっていった。その封筒は相当価値があるのだろう。



「そういう事か……」



そう言って太宰は俺の横を通り過ぎ、扉の方へ向かって行った。



「どこへ行くんだ、太宰。」



俺は太宰に分かりきったことを言う。これから太宰の人生は大きく傾くことになるだろう。
俺は理解してしまった。……織田作はもう助からない。くそ……友を失う痛みは孤独より痛いものなのか。そして、一番痛みが強いのは、太宰だ。




「織田作を助けに……」



太宰もきっとその事実はもう気づいているのだろう。でも、太宰は受け入れたくないのだ。
俺だって受け入れたくないし、気を抜けば今すぐにでも涙が溢れそうだ。でも俺は冷静じゃなきゃ
いけない。太宰はこちらを振り向かないまま、走り去って行った。



「君は追わなくていいのかい?」



薄い笑みを張りつけた首領が俺の方を向く。
俺はそんな首領を睨んだ。



「貴方……もともとこうなる事を想定してたのでしょう。」

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らずぴす(プロフ) - *ふわ*さん» ありがとうございます!とっても嬉しいです!!更新頑張ります! (2019年5月1日 15時) (レス) id: cd5ea6550c (このIDを非表示/違反報告)
*ふわ* - 初コメ失礼致します!主人公くんの性格その他もろもろ込みでこの作品のファンです!!更新頑張ってください!応援してます!! (2019年4月30日 20時) (レス) id: 18cb4fa1f4 (このIDを非表示/違反報告)
らずぴす(プロフ) - 薙(nagi)さん» ありがとうございます!そう言って貰えて嬉しいです! (2019年4月28日 21時) (レス) id: cd5ea6550c (このIDを非表示/違反報告)
薙(nagi) - 好きです((設定とか主人公の立ち位置が好みです!もう産まれてきてくれてありがとう!(?) (2019年4月28日 19時) (レス) id: ea3376027d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:らずぴす | 作成日時:2019年4月19日 19時

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