9話 ページ10
「僕は太宰治。十五歳。」
急な自己紹介に困惑する。こういう時俺はなんていえばいいんだ?それすらも分からない自分に本当に泣きそうになる。情けねぇ……
少年の名は太宰治というのか。十五歳……俺より一つ年下か、成程。
俺が太宰治と小さく呟き頷いていると、頬をふくらませた太宰くんがこっちに詰め寄って来た。
「もー!自己紹介だよ!自分の名前をいえばいいの!」
「おお、分かった。俺は夏目A、十六歳だ。よろしく太宰くん。」
太宰でいいよ。と太宰は微笑む。こういう時はとても年相応の顔なのだが……
裏社会で生きていると言ったよな、どこの組織だ?
「ポートマフィアだよ。ちなみに五代幹部やってまーす。」
明るい声色で片手を空に伸ばす太宰。
考えを見抜かれた。マ、マフィア……凄いな。漱石じぃちゃんから少し聞いたが、マフィアがここまでとは。
「凄いな……」
俺は思ったことを率直に言うと太宰はフッと笑い
「驚かないんだね。」
「これでも驚いているさ!顔に出ないだけだよ。」
それから二人川岸に座り他愛のない話をした。
夕日はもうすっかり消え、今は夜闇に包み込まれている。もう帰らなきゃな……
また、山登るのかー面倒臭い。
「そろそろ帰らないとだね。森さんに怒られる。」
「上司の人か?」
まあそんな所。と太宰は言う。太宰の上司か……会ってみたい気もする。
俺は立ち上がり伸びをする。太宰は軽く微笑みじゃあね、と俺に背を向け歩きだそうとしていた。
「太宰。」
俺が呼ぶとピタリと足音が止む。俺が太宰に言いたいこと。
きっとこれからさらなる苦難がまちかまえてるであろう太宰の心に寄り添えるように。
「辛いことや苦しいことは独りで抱え込むな。俺に話せ。話を聞くくらいはできる。」
それが、友としての務めだろ。太宰は振り向き曇った夜空を照らす満面の笑みで
「うん!」
と言ってまた歩き出していた。俺は太宰の姿が見えなくなるまでずっと背を見ていた。
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らずぴす(プロフ) - *ふわ*さん» ありがとうございます!とっても嬉しいです!!更新頑張ります! (2019年5月1日 15時) (レス) id: cd5ea6550c (このIDを非表示/違反報告)
*ふわ* - 初コメ失礼致します!主人公くんの性格その他もろもろ込みでこの作品のファンです!!更新頑張ってください!応援してます!! (2019年4月30日 20時) (レス) id: 18cb4fa1f4 (このIDを非表示/違反報告)
らずぴす(プロフ) - 薙(nagi)さん» ありがとうございます!そう言って貰えて嬉しいです! (2019年4月28日 21時) (レス) id: cd5ea6550c (このIDを非表示/違反報告)
薙(nagi) - 好きです((設定とか主人公の立ち位置が好みです!もう産まれてきてくれてありがとう!(?) (2019年4月28日 19時) (レス) id: ea3376027d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らずぴす | 作成日時:2019年4月19日 19時