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8話 ページ9

「友達……ねぇ。」



彼の瞳はまだ黒い。でもその中に寂しさと不安の色が混じっているのを俺は見逃さなかった。
きっとこの少年は俺と同じだ。暗闇の中を彷徨うただの独りぼっち。民衆や配下は俺の上面だけを崇め、誰一人自身のことを見てくれたことは無かった。



「そうだ、俺は独りだ。そしてかなりの口下手でな。友を作ろうと山から降りてきたんだ。」



なにそれ、と少年は笑う。この黒い瞳の持ち主は本当に俺と同い年くらいなのか?一体今まで何を見てきたらこんな目になるんだ。



「僕ね……裏社会の人間なんだよ?」



矢張り、か。じゃないとそんな目はできない。少年は手を広げ空を見上げる。夕日に照らされた少年は今にも消えそうで、儚かった。



「人を殺す側にいれば、必ず人の本性がわかる。そうすれば……」



少年は目を伏せ小さく呟いた。その一言に俺は目を見開く。



「生きていく理由が見つかると思ったんだ。だから、裏社会に入った。」



そうか、分かったぞ。この少年は俺と似ていると言ったが一つ違う点を見つけた。
彼は頭が相当キレるのだ。並大抵の人間よりとても有能な頭脳持っている。それ故、まわりに理解者がいなく、独り闇を彷徨っているんだ。
俺は少年の目をまっすぐ見つめて、口を開く。



「それでも構わない。お前がどこで生きていようが、俺は君と友達になりたい。」



少年の虹彩に色が戻った気がした。少年は目を閉じ、またゆっくりと目を開ける。



「そう……なら、君と僕は今日から友達だ。」



握手を求めるかのように伸ばされた華奢な腕の手を俺は迷わず力強く握る。少年の手は、冷たかったが俺の温度が伝わったのか徐々に温かくなっていった。



友達を作るのって意外と難しくて、それでいて大変ということを学んだ。

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らずぴす(プロフ) - *ふわ*さん» ありがとうございます!とっても嬉しいです!!更新頑張ります! (2019年5月1日 15時) (レス) id: cd5ea6550c (このIDを非表示/違反報告)
*ふわ* - 初コメ失礼致します!主人公くんの性格その他もろもろ込みでこの作品のファンです!!更新頑張ってください!応援してます!! (2019年4月30日 20時) (レス) id: 18cb4fa1f4 (このIDを非表示/違反報告)
らずぴす(プロフ) - 薙(nagi)さん» ありがとうございます!そう言って貰えて嬉しいです! (2019年4月28日 21時) (レス) id: cd5ea6550c (このIDを非表示/違反報告)
薙(nagi) - 好きです((設定とか主人公の立ち位置が好みです!もう産まれてきてくれてありがとう!(?) (2019年4月28日 19時) (レス) id: ea3376027d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:らずぴす | 作成日時:2019年4月19日 19時

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