彼女はラクサスに恋をした (ページ10)

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A視点

木製の階段を登ると、そこはS級魔導士しか上がることが許されない特別な場所。違うのは依頼板に貼ってある仕事の難易度くらいで、二階も一階とそう変わらないけどね。
ラクサスは中央にある椅子に腰かけていた。

「遅せえ」

「わざわざ持ってきてあげたんだから、文句言わないの」

持ってきた一式をラクサス渡すと、無言で取ってお酒を飲み始めた。
おい。礼はないのか？もう二度と持ってこないからな。
そんなこと言ってもラクサスには無駄なので、言いたい気持ちを飲み込んでラクサスの対面にある椅子に座った。

「なぁ。いつ帰ってきたんだ？」

「昨日の晩」

「帰ってきてるんだったら、連絡してくれればいいのに」

「なんでお前に連絡しないといけねえんだよ」

「そ、それは…心配だから……」

「人のことより自分の体のこと心配しろよ。それにオレはお前に心配されるほど弱くねえ」

「うっ…」

くっそ！！こいつ正論ばっか返してくるぞ！なに一つ言い返せねえ！！
でも、ぶっきらぼうだけど、ちゃんと聞いたことには答えてくれるんだよな。目は合わせてくれないけど…。

「…でもやっぱり心配なんだ。元同じチームだし……」

そう実は私は元ラクサスのチーム、通称雷神衆の一員だった。チームってよりか、ラクサスの親衛隊に近かったけどね。
そのチームができるまで、私はラクサスの相棒として一緒に仕事をすることが多かった。元々幼馴染でギルドに入った時期も同じだったからかな。
数年前の事件から魔法が使えなくなった私は、雷神衆を抜けた…。ラクサスや他のメンバーに迷惑をかけたくなかったからね。

「そういえば、フリードやビックスローは元気なのか？最近姿を見ないけど」

「普通……お前はどうなんだ？」

「私か？まぁぼちぼちってとこかな～。あ、でも最近ちょっと痩せたんだ！ほらこの辺スリムになっただろ？」

「…ふーん」

いや、聞いといて興味なさそうにするなよ。なんか私が馬鹿みたいだろ。見ろよこの腰周りを！！
手を腰に当ててアピールしていると、ラクサスが小さな箱を投げてきた。