彼女はラクサスに恋をした (ページ23)

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視点なし

《アイツが命張って守るほどの女かよ？はっ、これだから妖精の尻尾は駄目なんだよ。弱いやつに慈悲なんていらねえ》

「Aがルーシィに慈悲をかけたって言いたいの？！」

《あぁそうさ！アイツは優しすぎるんだよ。弱い奴なんて守る必要はねえ……その女はアイツに何をした？与えられて、守られてばっかりだろ？弱い奴はいらねえ。いっそのことファントムに引き渡》

ラクサスがいい終える前に、ラクリマは粉々に割れてしまった。それはミラが壊したから。ミラは怒りで震え、涙を流していた。

「ミラ…」

「信じられない……こんな人が……本当に妖精の尻尾の一員なの……？こうなったら次は私も戦う！！！」

「な…何言ってんのよ！！！」

「だって私がいたのに、ルーシィはさらわれてちゃって……Aは死んでたかもしれない！！」

「ダメよ今のアンタじゃ足手まといにらなる。たとえ元・S級魔導士でもね」

ミラはカナに何も言い返えさなかった。そして眠っていたAが目を覚ましたのは、そのすぐ後のことだった。

一方のラクサスはというと、通信が途絶えた通信用魔水晶を睨み付けていた。
頭に過るのは横たわっているAの姿と、この前交わした言葉。

『ほんと美味しいよ。ありがとう』

『後からいるって言ってもあげないからな。あーあー、こんなに美味しいのに。ラクサスは食べないのか』

『…邪魔して悪かった。仕事、気を付けてな』

「あの馬鹿…なにやってんだよ」

ラクサスだってAのことを心配している。しかし、それを素直に伝えることができず、言葉不足で時には厳しい言葉をぶつけてしまう。ラクサスなりの愛情だった。

「まぁ助けに行く気はねえけどな」

どうやら、Aは心配でも助けには行かないらしい。もし負けた時は、責任を負ってマスターの座を退くはずの現マスター・マカロフの後釜に自分が座り、もう一度幽鬼の支配者に報復すればいいと考えているからだ。マスターになったラクサスの思い通り、強い者だけの妖精の尻尾ができる。
そうなればAが傷つき、悲しむこともないと信じていた。

「…もうすぐだ。もうすぐ妖精の尻尾とAは俺のものになる」

その歪んだ愛は彼と彼女のの絆さえ引き裂くことになるのを、まだ彼は知らない。